国際宇宙ステーション(ISS)の物資補給機「こうのとり」9号機がISSから離脱し、20日午後に大気圏に突入して運用を終えた、と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表した。こうのとりの運用は今回が最後。日本初の宇宙船は2009年の初号機以降、9機全てが成功を収めた。来年度にも、改良型の「HTV-X」を初飛行させる。
こうのとりは5月21日に打ち上げられた。5日ほどかけて高度約400キロのISSに到着し、生命科学実験用の顕微鏡、固体材料の燃焼実験装置の一部、ISSの主電源となる日本製リチウムイオン電池採用バッテリー、宇宙飛行士の食料や生活物資など、計約6.2トンを届けた。実験や飛行士の生活で生じた不用品を搭載し、8月19日午前にISSから離脱。徐々に高度を下げ、20日午後4時7分ごろに高度約120キロで大気圏に突入した。機体の大半は燃え尽きたとみられ、一部は南太平洋の安全な海域に着水した可能性がある。
日本はISS計画への参加にあたり、運用経費の分担金を技術提供の形で支払うこととし、こうのとりを開発した。米国のスペースシャトルが11年に退役した後は、こうのとりが大型の船外用物資を運ぶ唯一の手段となり、バッテリーの輸送などを通じてISSに不可欠の存在となった。また、機体を直接接触させて結合する従来のドッキング方式に代わり、まずISSの中にいる飛行士がロボットアームを操作して宇宙船を捉え、その後に結合する方式を初めて採用。日本が安全性を実証したことで、米国の民間宇宙船も相次いでこの方式を採用した。
米国とロシアの全3機種の補給機が失敗を経験する中、こうのとりは15年に退役した欧州の「ATV」とともに無事故を続けた。打ち上げに使用したH2Bロケットと並んで、日本の宇宙技術の高さを示した。18年のこうのとり7号機では、ISSからの離脱後に実験試料の入った小型カプセルを分離し、洋上に着水させ、日本初の独自の物資回収にも成功している。
HTV-Xはこうのとりに比べ輸送力を高め、低コスト化を進める。政府は3号機以降について、米国主導で建設する月周回基地への物資補給にも活用することを検討している。
こうのとり9号機の分離にあたり、米テキサス州ヒューストンにある米航空宇宙局(NASA)の管制室では、JAXAの金井宣茂(のりしげ)飛行士が交信役の管制官を担当した。金井さんがISSの飛行士に向け「この最後の出発は新しい章の始まり。私たちは宇宙活動を拡大します。HTV-Xが楽しみです。ありがとう、さようなら、こうのとり」などと語る一幕があった。
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