近畿大学(近大)は8月20日、新型コロナウイルス感染症の日本における第一波について、北海道から沖縄までの全国28地域における感染拡大状況と気象データおよび大気汚染データを統計解析した結果、外気温が適度に高い、日照時間が長い、浮遊粒子状物質濃度が高いほど、感染拡大リスクが高いことを解明したと発表した。

同成果は、同大医学部 環境医学・行動科学教室の東賢一 准教授、東京工業大学 環境・社会理工学院の鍵直樹 准教授、国立保健医療科学院 生活環境研究部の金勲 主任研究官、北海道大学 工学研究院 建築都市空間デザイン部門の林基哉 教授らの研究チームによるもの。詳細は環境と健康に関する学術誌「Environmental Research」に掲載された

季節性インフルエンザや風邪のウイルスについては、気象や大気汚染との関係を指摘する研究がこれまで報告されており、今回、研究グループでは新型コロナウイルス感染症の流行拡大と気象や大気汚染との関係に関する研究として、緊急事態宣言で人の行動が大きく変容する前の第一波の感染拡大期に限定して、入手可能な他の関連要因にて解析を行ったという。

具体的には、流行拡大が始まった3月13日から4月6日までを5つの時期に区分して日本の28地域(札幌市、仙台市、富山市、金沢市、福井市、さいたま市、所沢市、川口市、東京都、千葉市、市川市、松戸市、船橋市、横浜市、川崎市、相模原市、名古屋市、岐阜市、京都市、大阪市、堺市、吹田市、神戸市、西宮市、広島市、福岡市、北九州市、那覇市)における累積感染者数の上昇率を算出し、同じ時期における気象(温度、湿度、降雨量、日照時間、風速)と大気汚染濃度(一酸化窒素、二酸化窒素、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質:SPM、微小粒子状物質:PM2.5)との関係を縦断的に解析し、各地域の人口指数や社会経済指数で調整を行ったという。

その結果、外気温が適度に高い、日照時間が長い、浮遊粒子状物質濃度が高いほど、感染拡大リスクが高いことが明らかになったとする。新型コロナウイルスの環境中での生存状況に関する実験結果からは、温度が高くなるとウイルスの生存率が低下すると報告されているほか、太陽光に含まれる紫外線に新型コロナウイルスを死滅させる作用があることが報告されていることから、感染拡大に対する外気温の影響は直接的ではなく、温かく晴れた日に人の行動が増えたことが感染拡大に関与している可能性が高いとしている(湿度に関しては、感染拡大リスクとの間に関係はみられなかったともしている)。

また、PM2.5のような粒子状物質が多い地域での感染リスクが懸念されているが、日本は大気汚染濃度としては低いこともあり、今回の研究からは粒子状物質との関係については弱い可能性が高く、粒子状物質がより高濃度の地域での調査や、動物や細胞を用いた実験などで、因果関係をさらに明らかにする必要があると研究グループでは指摘している。

なお、今回の研究は時期を限定して行ったもので、季節性を明らかにするためには長期間の研究が必要であり、新型コロナウイルス感染症から公衆衛生を守るために、今後もさらなる研究を続けていきたいと研究チームでは説明している。

  • 新型コロナウイルス

    新型コロナウイルスのイメージ (出所:近大発表資料)