デロイト トーマツ グループは8月21日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で1年後の移動・クルマに対する消費者意識について、6月に日本全国3120人を対象に実施した調査したと明らかにした。今回の結果を2018年に実施した同内容の調査結果を比較分析し、COVID-19前後の人々の移動・クルマに対する意識の変化をまとめたレポート「ポストコロナの移動に関する意向調査」を発表した。

調査は6月19日~21日に実施、調査内容は①回答者プロファイル、②COVID-19によるライフスタイルの変化、③Post COVID-19(現行から1年後)の想定移動(目的・頻度・手段・所要時間など)、④クルマに対する意識(クルマのイメージ、保有意向、利活用意向など)の4点。

レポートは2部構成となっており、Part.1の「移動に対する意識の変化」では移動目的別の移動手段・頻度・所要時間などの要素を元に移動目的別の推定移動量を算出し、2018年調査結果との差異を比較しながら、COVID-19による移動に関する変化を分析。Part.2の「クルマに対する意識の変化」では、COVID-19を受けてのクルマに対するイメージの変化と、マイカー保有、モビリティサービス将来利活用意向を調査・分析している。

移動に対する意識の変化

移動に対する意識の変化では、1年後を見据えた移動目的別の年間移動距離において2018年調査と比較し、通勤目的の移動割合が31.0%から19.5%へと11.5ポイント減少する見込みとなった一方で、移動量全体における私的な移動(買い物、外食、観光・レジャー、ドライブ、通院・診療)は前回調査の32.8%から今年度調査において44.0%になり、相対的に増加すると見込まれている。

  • 移動目的別の年間移動距離(2018年と今回調査の比較)

    移動目的別の年間移動距離(2018年と今回調査の比較)

年齢別では若年層(18~29歳)、地域別では都市部ほど通勤目的での移動割合の減少幅が大きい結果となったほか、回答者の約25%が1年後もリモートワークによる通勤の減少を想定している。しかし、リモートワーク進展の結果、郊外への引っ越しなどを計画している人は全体の5%未満で、居住地の変更という点に関してCOVID-19による短期的な影響は限定的だという。

  • リモートワークによる通勤目的の外出頻度の変化(1年後の想定)

    リモートワークによる通勤目的の外出頻度の変化(1年後の想定)

移動手段別年間移動距離においては、「3密」を生み出しやすい電車での移動が大きく減少する見込みとなっており、特にラッシュ時の移動が予想される通勤・通学では電車の回避が顕著となっている。電車の代替手段として、3大都市(東京23区、名古屋、大阪)では自転車・徒歩が、中核都市ではマイカー移動が増加すると見込まれている。電車が密の状況ではない地方部においては、電車を回避する傾向は見られなかった。

移動に求めるニーズにおいては、「安心・安全・3密回避」を求める声が増加し、快適性・時間の正確性・価格を求める声は減少。元来、時間の正確性を重視していた公的外出(通勤・通学・出張など)においても「安心・3密回避」がより優先されるという。

  • 業務上外出の移動ニーズ(2018年と今回調査の比較)

    業務上外出の移動ニーズ(2018年と今回調査の比較)

感染拡大防止のための個人情報の収集・利活用の是非については、「以前は反対だが現在は賛成」に転じた人(28.2%)を含め、全体の43.5%が賛成しており、COVID-19による意識の変化が表れており、特に女性において賛成に転じた人が多く(31.7%)なった。個人情報の開示に対する前向きな声の高まりは、動態監視や移動情報の利用に向けて追い風となる可能性があると推測している。

  • 個人情報の利活用に対する意識(男女別)

    個人情報の利活用に対する意識(男女別)

クルマに対する意識の変化

クルマに対するイメージを「特に意味なし」「単なる移動手段」と回答している無関心層は、前回調査より5.8ポイント上昇し、66.4%を占める結果となり、COVID-19による公共交通回避の意識から自動車保有の上昇が予想されていたが、今回調査結果では消費者の意識面からはマイカー回帰へのポジティブな傾向は見られなかったという。

  • クルマのイメージ(2018年と今回調査の比較)

    クルマのイメージ(2018年と今回調査の比較)

マイカーの将来保有意向では、現在の保有者の継続保有意向は変わらず高く8割近くを占めている一方で、現在非保有者の中で「将来も保有しない」と回答した人の割合が2018年調査の56.3%から67.0%と約11ポイント増加し、クルマ離れが加速する傾向が見られる。特に若年層と都市部においてその比率が高く、COVID-19がマイカー保有を促進する傾向は見られず、経済的な背景を非保有の理由とする声が多く、COVID-19による景気減速の影響が窺えるとしている。

COVID-19による外出自粛ムードが高まる中で、ポストコロナ/New Normalな暮らしをイメージしながら回答するという形で調査を実施。結果的には「公共機関は避けたい、でも自家用車は持ちたくない」という解決策なき回答が散見された。元来、第三の選択肢と見られていたシェアリング(自転車・自動車)などの新モビリティについては認知度、使い勝手、衛生面などで消費者を満足させるレベルに至っておらず、利用意向は限定的となった。

自動車・モビリティ業界においては、このような消費者の思考の変化を適時適切に捉え、消費者にとっての解決策を導出するための戦略の見直しが必要となり、モーダルシェアの大きな転換が見込める好機と考え、積極的な認知向上、顧客体験の改善、衛生面での対応徹底に重点的に投資を行うことが変革を牽引するために必要不可欠だという。