サイバーエージェントは8月20日、同社の人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」において、日本大学文理学部情報科学科助教の大澤正彦氏(※1)と「 HAI(※2)における認知的不協和の解消を用いたユーザーの行動変容」に関する共同研究を開始すると発表した。
近年、商業施設や宿泊施設などでの接客業務において、人の代替となる労働力として、コミュニケーションロボットやバーチャルエージェントなどの「対話エージェント」を活用する事例が増加している。
その中でも、対話エージェントがユーザーに何らかの行動を促す業務(通行誘導、商品販売、情報推薦など)において、ユーザーに行動を変えてもらうための説得能力が求められているが、同社によると対話エージェントがユーザーの意図をすべて理解し説得を行うことはまだ実現されていないという。
一方で、ユーザーの行動を変化させる理論として、行動心理学や社会心理学では「認知的不協和の解消」が重要とされ、マーケティングの分野でも研究が行われている。
「認知的不協和の解消」とは、人は意思決定をした後に行動を起こすのではなく、自己の中に矛盾した認知・不協和が生まれた時、そのつじつまを合わせようと行動や態度を決めたり変化したりする側面があることをいう。
同社は上記の背景の下、大澤氏と共に共同研究を開始することで、「認知的不協和を解消しようとする人の特性」と「人に対話エージェントの意図や欲求を認知させる技術」を組み合わせた、人の行動を促すインタラクションの実現に取り組んでいくとしている。
共同研究では、同社がこれまで実施してきた実フィールドでの実証実験結果を生かし、「人間と信頼関係を築き、人の行動を変えられるインタラクションモデル」を、幅広い産業に適用可能な汎用的技術として作り上げることを目指している。
(※1):幼少期から「ドラえもんをつくる」という夢の実現を目指し、認知科学、HAI、汎用人工知能の研究に従事している。著書に 『ドラえもんを本気でつくる』(PHP新書)がある。
(※2):Human-Agent Interaction:「人間」と「エージェント」との「インタラクション」を対象とした研究領域。ロボットやコンピュータに限らず、人間が知能を持った主体であると認知したものを「エージェント」と定義し、その主体と人間との相互作用を取り扱う研究を中心に、幅広い関心と課題を総合的に包含している。