Samsung Electronicsは8月5日、大画面折りたたみ式スマートフォン(スマホ)「Galaxy Z Fold 2」を発表したが、旧来のGalaxy Foldで用いられていた住友化学製のフッ化ポリイミドを用いた保護膜ではなく、ドイツメーカーSchottによる薄型ガラス(UTG:Ultra Thin Glass)が採用された模様だと複数の韓国メディアが報じている。
フッ化ポリイミドは、経済産業省が2019年7月1日に発表した対韓輸出管理強化素材3品目の1つとして指定されて以降、脚光を浴びている化学素材である。Samsungは、これら素材3品目すべてについて非日本製(韓国製および日本以外の海外製)素材へ切り替えを進めてきた。
今回、フッ化ポリイミドによる保護膜ではなくUTGを採用したことで、輸出管理が厳しくなっている日本製素材を用いなくてもやっていけるサプライチェーンが確立していることが示されたこととなる。もっとも、日本から素材が安く入手できれば購入先多角化の一環で今後も使用していくだろうが、日韓関係が今後、これまで以上に悪化して禁輸措置が生じる場合も想定している可能性も考えられる。韓国は、日本の対韓輸出管理強化を国際貿易ルール違反としてWTOに提訴、7月末に紛争処理小委員会(パネル)の設置が決まり、今後、日韓の攻防が本格的に始まることとなることから、日韓関係がさらにこじれていく可能性が高くなっているためである。
UTGをSamsung Displayが貼り付け
韓国デイスプレイ業界関係者によると、Galaxy Z Fold 2のディスプレイ・カバーウィンドウ用素材であるSchottのUTGは、韓国に輸入された後、ディスプレイガラスメーカーであるDowoo Insysが最終加工を施し、Samsung Displayに納入し同社が有機EL(OLED)パネルに貼ってSamsung Electronicsに納品するといった手順を踏んでいるという。韓国の業界関係者によると、Samsung Display は長年のパートナーであるCorningに開発費を渡してUTGの開発依頼をしているが、今回同社製が選ばれなかった理由は不明だが、おそらく開発が間に合わなかったためではないかと見られており、2021年に登場する予定の次世代機種ではCorningのUTGが採用される可能性が高いという。
なお、Samsung Displayは、2020年2月に折りたたみスマホ向け超薄ガラスとして「Samsung UTG」を商用化したと発表している。
このSamsung UTGは厚さ30μmで、加工過程でガラスに特殊物質を注入することで、均一な剛性を確保でき、キャッチフレーズの「Tough, yet Tender(強固だけれども柔軟)」という性質が実現するとしている。フランスの技術認定組織Bureau Veritasによる耐久性テストで20万回の開閉でも品質に問題がないという検証を得たとしている。
Samsung UTGは今回のGalaxy Z Fold 2で2機種目の採用となるが、今後、さらなる普及を進め、実績次第で外販する方向で調整を進めているという。