東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2020年7月のIT・ソフトウエア業界のM&Aの発表件数は15件で、7月としては2008年以降の13年間では、2019年の18件に次ぐ2番目の多さとなった。
一方、取引金額は約51億円で、7月としては2008年以降の13年間では2019年の約109億円に次ぐ4番目にとどまった。
件数、金額とも新型コロナウイルスの影響で低位が予想されたものの、平均を上回るペースで推移した。
取引金額トップは電算システムの約17億円
取引金額が最も多かったのは電算システムが、情報セキュリティー製品の輸入販売・保守サービスを手がけるピーエスアイ(東京都新宿区)を子会社化すると発表した案件で、取引金額は約17億円だった。
ピーエスアイは悪質なウイルスやハッカーによるシステム侵害を防ぐため、次世代ファイアウォールやUTM(統合脅威管理)製品、AI(人工知能)利用のサイバーセキュリティーシステムなどを米国などから輸入している。
電算システムは岐阜市に本社を置く独立系情報処理サービス企業。最近はデータセンターを中心としたクラウドサービス事業にも力を入れているが、これら既存事業で情報セキュリティーのニーズが高まっていたため、情報セキュリティー事業を強化することにした。
金額の2番目はポートが外装塗装のマッチングサイトを運営するドアーズ(東京都港区)の全株式を取得し、子会社化した案件で、取引金額は約16億円。
ドアーズは「外装塗装の窓口」というサイト運営を通じて、顧客と施工業者のマッチングを行っている。加盟店数は3500社以上、流通取引総額は35億円以上と外装リフォームマッチングサービスでは業界最大級の実績を持つという。
ポートは就活領域メディア「キャリアパーク!」を主力とするが、これまで培ってきたマッチングノウハウを生かし、事業領域を横展開する。
3番目はマネーフォワードが会計関連システムを開発・販売するアール・アンド・エー・シー(東京都中央区)の株式を追加取得して子会社化することを決めた案件で、現在12.3%の持ち株比率を77.8%に引き上げる。取得価額は約13億円だった。
アール・アンド・エー・シーは入金消込・債権管理システムを手がけており、大手から中小企業まで幅広く導入され、国内トップクラスの実績を持つ。
マネーフォワードは会計ソフトを展開しており、アール・アンド・エー・シーを傘下に取り込むことで、中堅規模以上の企業向け商品の拡充につなげる。
7月のM&Aは、このほかに10億円未満が4件、金額非公表や未確定などが8件あった。