Huaweiは、ファウンドリ各社が同社からの製造委託を事実上受けることを禁じた米国商務省通達(2020年5月15日付け)に対処するため、5Gスマートフォン(スマホ)向けモバイルアプリケーションプロセッサ(AP)の購入先の多様化を進めるとともに、子会社であるHiSilicon TechnologiesのKirinチップの採用を削減していると台湾メディアのDigiTimesが報じている。
台湾MediaTekは以前からHuaweiのサードパーティ5G向けAPのサプライヤであるが、Huaweiは2020年第2四半期以降、MediaTekのミッドレンジSoC「Dimensity 800 5G」の購入量を増やしており、今後はMediaTekよりハイエンド5G APの購入も開始する可能性があるという。米国商務省は、外国の半導体企業が製造する標準的な半導体をHuaweiへ販売することはいまのところ規制対象としていない。
DigiTimesの調査部門であるDigitimes Researchによると、2020年上半期、中国市場においてQualcommのプレミアムSoC「Snapdragon 865」の販売数がMediaTekの5G対応SoC「Dimensity 1000」を上回ったという。もし、Qualcommが、自社製品をHuaweiへ販売する許可を米国商務省より得られれば(関係者筋からは米国政府は原則的に許可しないとの見方があるものの、例外が出ない可能性も否定できないという)、HuaweiがQualcommからチップを購入する可能性もあるという。
またSamsung Electronicsと清華紫光集団傘下のUnisoc TechnologiesもHuaweiの5G APの代替ソースになる潜在的可能性があるとされるが、SamsungはHuaweiのスマホでの直接的な競合であり、Unisocはまだ技術開発において他企業と比べると劣っており、両者とも現実には代替ソースになるのは難しそうである。
中国最大のファウンドリであるSMICは、同社最先端となる14nmプロセスによる製造委託をHuaweiから受けていたが、このまま続ければ米国政府に睨まれかつての中JHICCのように米国製半導体製造装置の使用ができなくなることを恐れてHuaweiとの取引を中断している模様である。米国商務省産業安全保障局は、2020年5月15日付けで、米国外のファウンドリ(中国も含む)が、Huaweiグループが設計した半導体チップを米国製製造装置を用いて製造受託することを事実上禁止する通達を出した。TSMCのHuawei製品製造中止だけが注目されているが、実はSMICはじめすべての米国外ファウンドリが規制対象企業に入っている。
米国商務省はHuaweiについて、いままでも米国政府の様々な規制に対して、くぐり抜ける取り組みに精を出して来たと述べている。これは、あいまいな表現規制の抜け穴を探して対処してきたということであるとされており、新たな規制として、2020年9月中旬以降、TSMCに製造委託していた半導体チップの入手ができなくなるようにした経緯がある。そのため半導体消費量が多いHuaweiが今後、どのようにこうした規制に対し対処するか、半導体業界の関係者たちは注目している。