国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の市場調査統計集計グループのシニアプリンシプルであるChristian Dieseldorff氏は、7月20~23日に開催された半導体製造装置材料に関するバーチャル展示会「SEMICON West 2020」の併催イベントとしてバーチャル開催された「SEMI Market Symposium」において「世界半導体ファブ投資および生産能力動向予測」というタイトルで講演を行い、2020年年央のSEMIとしての市場予測を明らかにした。
乱高下を繰り返し成長してきた半導体製造装置市場
1999年以降の半導体ならびに半導体製造装置の市場の推移をみると、半導体デバイス以上に半導体製造装置市場の乱高下が激しく、同氏は「まるでジェットコースター」と表現するほどである。ただし、2020年の初頭に新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で確認された際には、半導体産業も悪影響を受けると見られていたが、7月時点までで見ると、大きな影響は出ていない。
しかし、その一方で、2019年末から2020年2月にかけて半導体市場調査会社各社やWSTS(世界半導体市場統計)は、2020年の半導体市場を前年比で平均7%増と見積もっていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が顕著になると、一斉に下方修正を行うなどの動きを見せた。ただし、収束の時期がまったく見えないため、各社の修正幅はまちまちで平均で同1%増となっている。中にはプラス成長予測からマイナス成長予測へ修正した後、さらにプラス修正へと2か月起きに修正する調査会社もあり、まったく将来を予測できていない状況となっている。2021年については各社ともにプラス成長との予測を示しているが、その幅も同4.5%増~16.5%増と広いものとなっている。
半導体ファブ設備投資額
SEMIでは2020年の半導体の前工程ファブに対する設備投資として最大市場となる分野をNANDの130億ドルとしており、次いでDRAMの120億ドルと予測している。メモリ全体で見れば2020年は前年比14%増、2021年も同22%増と高い成長が期待されている。
次いで投資額が大きいとみているのがファウンドリだが、2020年は同1%減とマイナス見通しで、2021年に同10%増としているが、動きはメモリと比べて小さい見込みである。
そのため、前工程ファブの生産能力をデバイスカテゴリ別に見た場合、2020年はファウンドリとメモリの生産能力がほぼ拮抗する形となる。この2つのデバイスカテゴリに次いでディスクリート、オプトエレクトロニクス(イメージセンサを含む)の生産能力が高い見通しとなっている。
国・地域別で見た場合、2019年は4位であった中国が圧倒的に生産能力を高める見通しで、2021年には台湾、韓国、日本を抜いて1位に躍り出る可能性がある。また、2020年ならびに2021年の中国での生産能力の増加分における中国資本による企業の増加分が、外国資本の増加分を超える見込みとしており、中国企業の存在感が増す見通しだという。2021年の国・地域別で見た生産能力は、中国、台湾、韓国、日本、米州、欧州、東南アジアの順になるとSEMIでは予測している。
まだまだ世界では半導体ファブの増加が続く
2020年は18の半導体量産ファブが、2021年には14のファブがそれぞれ建設を開始する予定で、投資総額(建屋+クリーンルーム+設備)は2020年が540億ドル、2021年が750億ドルとSEMIでは予測しており、うち中国でのファブ建設が2020年、2021年ともに他の国・地域を大きく引き離す8棟ずつ予定されている。また生産能力の増加分としては、2020年が50万枚/月(200mmウェハ換算)、2021年が120万枚/月(200mmウェハ換算)と予測している。