東京薬科大学は7月31日、同大薬学部の林良雄 教授および今野翔 助教らのグループが、群馬大学医学部の神谷亘 教授らと2013年に開発した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)の酵素の1種「3CLプロテアーゼ」に対する阻害剤「YH-53」が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を強く抑制することを確認したと発表した。
ウイルスプロテアーゼ阻害剤は、AIDSやC型肝炎の特効薬として知られており、新型コロナウイルスもメインプロテアーゼ(M-Pro)とも呼ばれる3CLプロテアーゼ(3CL-Pro)を独自に有していることが知られている。また、先行研究からSARS-CoVとSARS-CoV-2における3CL-Proの相同性が99%と高いことが報告され、YH-53が効果を発揮できるのではないかと期待されていた。
そうした背景から、群馬大の神谷教授らが新型コロナウイルスに対する抗ウイルス試験を実施。YH-53をはじめとする複数の阻害剤が良好な抗ウイルス効果を示すことを確認したという。
なお、SARS-CoV-2 3CL-Pro阻害剤研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の令和2年度 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発」に係る公募(2次公募)における採択課題「肺胞細胞増殖および重症化抑制を目指指した超多重ガイドRNA発現ゲノム編集アデノベクターとプロテアーゼ阻害剤の併用による抗COVID-19療法の戦略的開発」において、代表機関である群馬大学(代表研究者:神谷教授)の下、分担研究課題として実施されており、東京薬科大では、林教授ならびに生命科学部の小島正樹 教授(コンピュータ分子設計)が分担研究者として参画し、YH-53を基盤としてSARS-CoV-2 3CL-Proの選択的新規阻害剤のさらなる創製研究が進められているという。今回の研究で良好な結果が確認されたことから、今後、動物での感染抑制試験などを実施し、医薬としての有効性・安全性を確かめていくとするほか、なるべく早い段階で今回の結果について学術論文として発表したいとしている。