国立天文台と東京大学を中心とした国際研究チームが、地球から4.3億光年の宇宙のかなたに誕生後約1000万年しかたっていない銀河を発見したと発表した。人工知能(AI)技術を使った観測データ解析の成果で、約138億年前のビッグバンで誕生したとされる宇宙では“赤ちゃん”のような銀河だ。国立天文台は宇宙と銀河の進化を解明する上で重要な知見としている。研究成果は3日付の米国天体物理学誌「アストロフィジカル・ジャーナル」電子版に掲載された。

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    夏の星座として知られるヘルクレス座の方向の4.3億光年離れた宇宙で見つかった“赤ちゃん銀河”の「HSC J1631+4426」(国立天文台提供)

国立天文台と東京大学宇宙線研究所の教授を兼務する大内正己氏らの国際研究チームは、すばる望遠鏡(米ハワイ州マウナケア山頂)で撮影した膨大な画像データの中から若い銀河が放出する特徴的な色を見つける、AIの「機械学習」手法を開発した。そして、すばる望遠鏡が撮影した約4000万個の銀河から、いくつかの若い銀河の候補を選び出した。

チームはさらに、すばる望遠鏡や、やはりマウナケア山頂にある米国のケック望遠鏡でこの銀河の光を詳しく観測(分光観測)した。すると、夏の星座として知られるヘルクレス座の方向の4.3億光年離れた宇宙にあり、「HSC J1631+4426」と名付けられた銀河の酸素含有率が太陽の1.6パーセントしかなく、若い銀河候補の中で最小値であることが判明した。

宇宙誕生時には水素などの軽い元素しか存在しないが、星の誕生や爆発を繰り返すことで酸素など重い元素ができる。このため、酸素含有率は銀河の若さを調べる手がかりとなるとされている。チームの一連の観測データ解析では、「HSC J1631+4426」が一番若い銀河であることが明らかになった。銀河の酸素含有率としては最小記録で、これまで見つかったあらゆる銀河の中でも最も若い可能性があるという。

また、この銀河の年齢は、太陽系が属する天の川銀河と比べても約1000分の1にあたる1000万年程度。質量は太陽の80万倍程度で天の川銀河の約10万分の1しかなく、単独の銀河としては極めて軽いことも分かった。

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