第一生命保険と富士通は7月29日、保障設計予測モデルを構築し、AI(人工知能)が契約客の意向に基づいて保障プランを提示する「AI保障設計レコメンドシステム」を開発したと発表した。第一生命は2020年4月に新システムの全国展開を開始し、生命保険業界初という取り組みとして7月3日に単独特許を出願したとのこと。
同システムは、第一生命の生涯設計デザイナーが過去に作成した約1700万件の保障設計データをAIが機械学習し、加入中の契約情報に加え、契約客が重視したい保障内容や保険料の予算などの意向に基づき、「3大疾病等重視プラン」「死亡重視プラン」「病気・ケガ重視プラン」などの保障プランを自動作成するという。
同システムでは、生涯設計デザイナーが行っている保険提案のプロセス(顧客ニーズ確認ステップと具体的提案ステップで構成)をAIがアシストすることで、経験の浅い生涯設計デザイナーを中心に、コンサルティング力の高度化・品質の均質化を可能にするとのこと。
また、同システムでは複数のプランを比較表示できるため、より意向に沿ったプランを選択してもらいやすく、顧客満足度の向上を実現するとしている。
さらに、同システムでは作成した保障設計データを定期的・継続的に機械学習していくため、時代のニーズに沿った意向をタイムリーに反映した保障プランのレコメンドが可能になるという。
ワーク・スマートの実現に関して、生涯設計デザイナーは1日の業務時間において保障プランの作成に約1~2時間の時間を要しているが、同システムの導入で1日あたり約30分・年間約120時間の短縮を見込んでいる。
生涯設計デザイナーが保険設計に要する時間を効率化し、削減時間をより付加価値の高いコンサルティング業務へ充てることで、ワーク・スマートの同時実現も目指す。
さらに同システムは、生涯設計デザイナーにとって商品の組み合せなど、設計における新たな気づきを得る一助になると見込んでおり、生涯設計デザイナーのスキル向上にも寄与するとしている。
同システムは、生涯設計デザイナーのノウハウと機械学習のAIモデルの両立を実現したという。
年間約1700万件の保障設計データを使用し、第一生命と富士通のデータサイエンティストが独自のAI学習モデルを開発したとのこと。
このAI学習モデルは、生涯設計デザイナーのノウハウを定量的に評価し、ひな型となるモデルを定義、過去の成約状況から妥当性や有効性を検証するサイクルを繰り返す手法で構築したとしている。
また、同システムで開発したAIモデルは、一般的なインプットからアウトプットまでがブラックボックス化するAIモデルとは異なり、モデル化した生涯設計デザイナーのノウハウと、保障プランの生成及び評価を実施する、複数のAIモデルとの組み合わせになっているという。
これにより、作成した保障プランにおける説明性や、商品改定に伴うAIモデルのメンテナンス性において優位な特性を持ち、実用性の高いAIモデルを実現しているとのこと。
なお富士通は、同システムにおいてAI学習モデルの構築及びアプリケーション、クラウド基盤の開発支援と運用を担当しているという。