小惑星探査機「はやぶさ2」が今年12月に地球帰還を果たした後、残った燃料で次に向かう天体の候補を2つの小惑星に絞り込んだことを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が明らかにした。10年ほどかけて到達し、探査済みの天体との比較などを通じて太陽系の小規模天体の理解を深める。9月にも、どちらかに決定する。
候補天体は地球の軌道に近づくことがある約1万8000個から選んだ。残存燃料で到達できること、通り過ぎる際に探査する「フライバイ」ではなく上空にとどまる「ランデブー」ができること、軌道がよく分かっていることなどを勘案した結果、小惑星2つが残った。
このうち「2001AV43」は、地球からの観測によると直径約40メートルの細長い星。初代「はやぶさ」が探査した「イトカワ」と同じ岩石質の可能性がある。金星と地球の引力を利用して軌道を変更し変速する「スイングバイ」を経て、2029年11月に到着する。途中で金星を観測できる利点がある。もう一つの「1998KY26」は、直径約30メートルの球状。はやぶさ2が訪れた「りゅうぐう」と同様に炭素質の可能性がある。別の小惑星への接近や地球スイングバイを経て 2031年7月に到着する。
いずれの星も、わずか10分ほどの周期で自転している。小型で高速自転する小惑星の探査は史上初となる。このサイズの天体は100~数百年ごとに地球に衝突しており、探査が被害対策などの研究に役立つ可能性もある。はやぶさ2がりゅうぐうで行ったような試料の採取はせず、地球への再帰還もしない。
22日にオンラインで会見した津田雄一プロジェクトマネージャは「2候補は他の天体より条件が断トツによかった。12月の地球帰還が前提だが、余力でさらに挑戦できるのはありがたい。いわば減価償却された探査機を活用するので生き残る保証はないが、挑戦的なことをしたい」と述べた。吉川真ミッションマネージャは「どちらの星も非常に興味深い。イトカワの時に『小さい所に行っても仕方ない』ともいわれたが、新発見がたくさんあった。今回も多くのことが分かるだろう」とした。
はやぶさ2は14年12月に地球を出発し、18年6月から昨年11月までりゅうぐうに滞在。2回の着地で、地表と地下の試料を採取できたとみられている。12月に試料が入ったとみられるカプセルを、オーストラリアに投下する。往復の航行実績は約49億5000万キロに達し、残すところあと3億キロほどとなった。
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