半導体市場調査会社である米IC insightsは、2020年のIC市場は前年第4四半期と2020年第1四半期の売上高比率で導き出される「IC景気指標」を元にすると、新型コロナウイルスによるマイナス影響を組み込んだ後でも、2019年の成長率である前年比15%減という状況よりも良くなるはずだとの見方を示した。

同社のIC景気指標は、特定の年の最終的な年間成長率を直接的に予測するものではないが、前年第4四半期と当該年第1四半期の比較をすることで年間の成長率についての予想される方向と大きさを表す指標になると同社では説明している。またその理由について、IC市場の季節性にあるとしている。IC業界特有の典型的な四半期ごとの季節パターンを考えると、第1四半期は、基本的に将来の四半期ごとのIC市場の成長が構築される「基礎」を確立する四半期であるという。

そのため、ある年の1Q/4Qの値が前年のQ1/Q4のものよりも優れている場合、その年の年間成長率は前年よりも良い方向に振れると予想できるという。2020年Q1/2019年Q4の変化率は3%減で、2019年Q1/2018年Q4の変化率17%減よりも優れているため、IC市場の2020年の通期成長率は、状況が改善するはずだとしている。

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    第1四半期のIC売上高の前年第4四半期IC売上高に対する増減率(Q1/Q4)と年間売上高の前年比増減率の推移 (出所:IC Insights)

IC InsightsのIC景気指標は2020年には当てはまらない可能性がある。というのも、時期的に新型コロナウイルスの影響がほとんどない値であり、それをそのまま参考値として利用できるかは疑問が残るためである。IC InsightsでもITバブル崩壊やリーマンショックの時のような、「深刻な景気後退後の年には当てはまらない可能性がある」としており、2020年ならびに2021年もこの指標を当てはめまらない可能性を加味する必要があり、あくまで目安程度に見ておくのがよさそうである。

2020年の半導体市場の予測については、各市場調査会社とも迷走しており、例えばIC Insightsは、2020年のIC市場予測を年初には前年比8%増としていたが、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、4月に同4%減、6月に同3%増として、さらに次回の修正時には同8%増かそれ以上の可能性もあると、目まぐるしく予測を修正し続けている。なお、半導体業界関係者の中からは、新型コロナウイルスは世界規模では収束には向かっておらず、むしろパンデミックの状態がさらに深刻さを増していっているとの見方を示すものもおり、楽観的な見方を排して今後の予測については慎重に期すべきだという意見もでている。