グーグルは米国時間の2020年7月15日に、同社が提供しているクラウド型のグループウェア「G Suite」において、メールサービスの「Gmail」の大幅なリニューアルを実施すると発表しました。ビデオ会議やチャットなども取り込み、総合ビジネスコミュニケーションサービスとなることを目指すようですが、具体的にはどのような変更がなされるのでしょうか。

Gmailに「Meet」と「Chat」が統合

「Gmail」は多くの人に利用されているグーグルの人気メールサービスですが、グーグルは2020年7月15日(米国時間)に、G Suite版のGmailをメールサービスとしての枠を大きく超えたビジネスコミュニケーション環境へと大幅に改変することを発表しています。

では実際のところ、今回のリニューアルによってどのような部分が従来のGmailと大きく変わることとなるのでしょうか。最も大きな変更となるのは、Gmailにチャットやビデオ会議の機能が統合され、シームレスなコミュニケーションができるようになることです。

Gmailにはこれまで、メールをやり取りするというメインの機能のほか、テキストやビデオでのチャットをする「ハングアウト」が備わっていたのですが、これはあくまでGmailのサポートとしての意味合いが強いものでした。しかしグーグルは現在、そのハングアウトを分割・発展させる形で「Google Chat」「Google Meet」を提供し、チャット機能の強化を図っていました。

そして、ここ最近のアップデートにより、GmailからGoogle ChatとGoogle Meetを利用しやすくする仕組みが整えられたのですが、今回のリニューアルではさらに一歩進めてGmailとの統合を推し進めていくようです。具体的にはGmailの左側のサイドバーに「Mail」「Chat」「Meet」の項目が設けられ、Gmailから離れる必要なくメール、チャット、ビデオ会議といった複数の手段を用いてのコミュニケーションが可能となります。

  • リニューアルされたWeb版のGmail。左側のサイドバーに「Mail」「Chat」「Meet」といった項目が用意され、Gmail上でそれらを活用したコミュニケーションの連携がしやすくなった

    リニューアルされたWeb版のGmail。左側のサイドバーに「Mail」「Chat」「Meet」といった項目が用意され、Gmail上でそれらを活用したコミュニケーションの連携がしやすくなった

それゆえ、例えばビデオ会議とチャットを並行しながら会議を進めたり、メールに添付されたファイルをチャットで共有したり、チャットの内容をメールにまとめたり……と、各サービスを連携した作業もできるようになり、効率的なビジネスコミュニケーションが可能になることが理解できるのではないでしょうか。

もちろん、モバイル版のGmailアプリにも同様のアップデートがなされるようです。新たに画面下部にコミュニケーション手段を切り替えられるタブが設けられ、それらをシームレスに切り替えながらコミュニケーションをすることが可能になります。

  • スマートフォン版のGmailアプリにも、画面下部に「Mail」「Chat」などのタブが設けられる

    スマートフォン版のGmailアプリにも、画面下部に「Mail」「Chat」などのタブが設けられる

従来、スマートフォンなどではGoogle MeetやGoogle Chatを利用するのに別のアプリが必要でした。しかしながらリニューアル後はアプリを切り替える必要なく、Gmailアプリ1つだけでメール、チャット、そしてビデオ会議もこなせるようになるのです。

  • スマートフォンでは従来、チャットやビデオ会議をするのに複数のアプリが必要だったが、新しいGmailでは1つのアプリで全て利用可能となる

    スマートフォンでは従来、チャットやビデオ会議をするのに複数のアプリが必要だったが、新しいGmailでは1つのアプリで全て利用可能となる

「Rooms」でグループ内での共同作業を効率化

今回のリニューアルで最も大きなポイントとなるのが、サイドバーに新たに設けられた「Rooms」ではないでしょうか。これは同じチームのメンバーがリアルタイムにコミュニケーションしながら作業できるチャットルームであり、「Slack」や「Chatwork」などに近い機能といえば分かりやすいかもしれません。

実際Roomsの会議には「Chat」「Files」「Tasks」の3つのタブが設けられています。それらのタブを切り替えることで、チャットによるコミュニケーションのほか、ファイル、そして作業中のタスクを参加しているメンバー全員で共有できるようになっているのです。

  • 「Rooms」ではタブを切り替えることで、メンバー同士でのチャットだけでなく、ファイルや作業中タスクの共有なども可能になる

    「Rooms」ではタブを切り替えることで、メンバー同士でのチャットだけでなく、ファイルや作業中タスクの共有なども可能になる

しかも今回のリニューアルで、Gmail上でGoogleドキュメントによる文書編集も可能になります。それゆえRoomsのメンバー同士でドキュメントを共有し、直接相談をしながらその内容を編集、作業が終わったらタスクの完了を他のメンバーにも通知する、といったことをGmailから一切離れることなく実現できるようになります。

  • GmailにGoogleドキュメントの機能も取り込まれ、グループ内でGmail上からドキュメントを共同編集することも可能だ

    GmailにGoogleドキュメントの機能も取り込まれ、グループ内でGmail上からドキュメントを共同編集することも可能だ

もう1つ、大きな変更点となるのが検索機能です。Gmailの検索機能は非常に強力なことで知られていますが、その検索機能がメールだけでなくチャットでも利用できるようになります。こちらもSlackなどを意識した機能追加と言えますが、新しいGmailではチャットの重要性が大幅に高まると考えられるだけに、チャットでの重要なやり取りを後から探しやすくなることで利便性が大きく高まることとなりそうです。

  • 検索機能はメールだけでなく、チャットも検索できるようになった

    検索機能はメールだけでなく、チャットも検索できるようになった

G Suiteは個々のサービスとしては非常に便利でしたが、実際にコミュニケーションしながら作業するには、その都度複数のサービスを切り替える必要があるというのが不満点となっていました。それだけに今回のリニューアルは、すべてのサービスをGmail上に集約することで、メンバー同士でのコミュニケーションと作業をより効率よくできるようにする狙いが大きいといえそうです。

個人向けGmailもリニューアルされるのか?

一方で、これら機能の追加によってGmailはさらなるセキュリティの向上も推し進めていく方針が示されています。実際、新しいGmailにはチャットに貼り付けたリンクに、悪意のあるコンテンツが含まれているかどうかをリアルタイムでスキャンする機能が用意されるようです。Gmailは非常に強力な迷惑メールフィルター機能が備わっていますが、メールよりも一層リアルタイム性が求められるチャットでも安全性をしっかり確保できる仕組みが用意されるのはうれしいところです。

ちなみに、今回の発表と同時にGoogle Meetのセキュリティ強化も打ち出されています。今後数週間のうちに、会議の主催者が参加者を制御する機能で、一度退出した出席者は彩度招待しない限り参加ができなくなる「Knocking controls」や、出席者が実際に発言やプレゼンテーションをできるかどうか制御できる「Safety locks」などの機能が提供されるとのことです。

  • 今回の発表に合わせてGoogle Meetのセキュリティ強化も打ち出されており、主催者が参加者の発言などを制御できる機能が近く提供されるようだ

    今回の発表に合わせてGoogle Meetのセキュリティ強化も打ち出されており、主催者が参加者の発言などを制御できる機能が近く提供されるようだ

なお、これらリニューアルされるGmailの内容は、G Suiteユーザーであればこちらから申し込むことで順次試すことができるそうですが、準備ができた段階で順次通常のG Suiteユーザーに向けても提供されていく模様です。ただ具体的な時期については明記されていないので、正式な提供まではしばらく待つ必要があります。

また、これはあくまでG Suiteユーザー向けのGmailに関するリニューアルであり、個人向けに提供されているGmailで同様の機能が使えるようになるかは分かりません。とはいえチャットとビデオ会議との連携など、個人でも便利に使えそうな機能はいくつかあるので、すべてとは言わないまでもいくつかの機能を個人向けにも提供してくれることを期待したいところです。