日本の製造業活性化に向けたサービスが開始
ジェイテクトは7月21日、2020年4月1日付で設立した製造業マッチングサービス「ファクトリーエージェント」を手掛ける100%子会社「ジェイテクトFA」の社名を「ファクトリーエージェント」へと変更し、本格的に事業を立ち上げること、ならびにファクトリーエージェント浜野製作所が業務提携を結んだことを発表した。
社名変更の経緯について、ジェイテクトの取締役社長である佐藤和弘氏は、「FAはファクトリーオートメーションと捉えられることもあるため、そのままのファクトリーエージェントでどうか、という話になった」とするほか、それと併せて、ジェイテクトという冠を外すことで、ジェイテクトの領域に縛られずに、「製造業向けマッチングサービスを幅広く行っていくのに、ジェイテクトという名前が枷になる可能性があると考え、取ることにした」(佐藤氏)とする。ただし、「ジェイテクトという名前はついていないが、ジェイテクトとしても裏方として、頑張ってサポートして、ファクトリーエージェントのビジネスを成功させるための手助けをしていきたい」(同)ともしており、突き放す形での独立ではなく、あくまでサービスを広く製造業に浸透させるために必要であると考えて行ったことだと強調する。
また、ファクトリーエージェントの代表取締役社長の上出武史氏は、このサービスを展開するにあたって、「日本各地の町工場や工業地帯の元気がなくなってきている。そうした有様を見るにつれ、このサービスを実用化し、日本のものづくりに活況を取り戻したいという思いが募っていった」と、日本の製造業がこのままではだめになってしまうのではないか、という危惧を抱いたことが発端であったとする。
どうやって製造業のマッチングを実現するのか
ファクトリーエージェントの具体的なサービス内容は、図面加工品を探す「発注者」と、必要な加工技術を有する「受注者」を、独自のネットワークとプログラムを活用してマッチングさせようというもの。発注者、受注者に対する初期費用は発生せず、ファクトリーエージェントは新しい部品が実際に調達できた際に、成果報酬という形で対価をもらうビジネスモデルを採用するという。
また、受注者側が面倒や売掛金の回収などもファクトリーエージェントが代行するほか、保証や翌月現金払いも行うとしており、新規取引における代金回収リスクをゼロにすることで、町工場や中小企業の経営安定化にもつなげたいとしている。
上出氏は「いろいろなマッチングサービスがこの20年ほどで登場してきたが、製造業向けというのはあまりでてこなかった。いろいろと難しい面があるが、ポイントはインプットとアウトプットの問題。使ってくれる人が、どのような入力と出力が欲しいのかが分からないと使い物にならない。そのため、我々はジェイテクトとしてのものづくりに対する理解に加え、社内メンバーの1/4をIT関連人材とすることで、ものづくりが分かる人とITが分かる人が協力してしっかりと問題をクリアにしていくことを可能にした」と、自社のサービスに自信を見せる。
さらに、浜野製作所との提携により、町工場を運営している側として、より発注と受注の間で生じるミスマッチの低減を通訳のように介在していくことで、高い品質のサービス提供が可能になるとするほか、浜野製作所などの加工側の町工場や中小企業側から実際にサービスを活用していく中で出てきた意見を集めて、これまでになかったサービスを町工場・中小企業の立場から展開したりすることも期待できるとしている。
なお、上出氏は、売り上げは確かに重要とする一方で、「数字を安易に追って、ビジネスモデルの基盤、パートナー基盤、発注者をサポートする基盤ができないと、簡単には結果が出ないと思っている。そのため、まずは基盤づくりをしっかりと進め、一日でも早く利用者に満足してもらえる体制を整えたい」とし、当面はサービスを提供しつつ、足腰のしっかりとした強い組織づくりも進めていき、将来にわたるサービスの拡大を目指していきたいとしている。