TSMCは7月16日、2020年第2四半期(4~6月期)の連結売上高が前年同期比28.9%増の3107億NTドル(約1兆1300億円)、純利益が同81.0%増の1208億NTドル(約4400億円)と、前年同期比で、大幅に伸長したことを発表した。売上高、純利益ともに事前の市場からの予測よりも高かったという。
同社の売り上げの伸びを支えたのは5G対応スマートフォン(スマホ)の新機種発売や、在宅勤務の拡大で需要が伸びたサーバを中心とする先端半導体需要の高まりだという。また、米中貿易戦争に伴う、米国の規制強化により、2020年9月以降、TSMCも中国Huaweiとの取引が禁止される予定だが、Huaweiはそれに向けて在庫の積み増しに動いており、TSMCの業績の下支えになったようだ。
TSMCは、同社の売り上げの約15%を占めるHuaweiへの販売が途絶えても、AMDはじめ米国の先端ファブレスからの注文の増加で十分穴埋めできると見ており、そうした背景から年間売上高予測も上方修正した。
売り上げの増加を後押しした先端プロセス需要の増大
第2四半期におけるプロセス別の売上高比率は、7nmが全体の36%、16nmが18%を占め、自社が高度なテクノロジーと定義する16nmプロセス以下の先端プロセスだけで、全売上高の54%を占めている。
TSMCのバイスプレジデント兼最高財務責任者(CFO)であるWendell Huang氏は、「5Gインフラストラクチャの導入と高性能コンピュータ(HPC)関連の製品の発売が他のプラットフォームの弱点を相殺した。2020年第3四半期も5Gスマートフォン、HPC、およびIoT関連需要にけん引され、業界をリードする5nmおよび7nmプロセスを中心に顧客のビジネスをサポートできることを期待している」と語っている。
米中貿易戦争という難曲を乗り切る強気の経営戦略
TSMCは、現在の事業見通しに基づいて、2020年第3四半期の業績について、売上高を前四半期比8~10%増の112億~115億ドル、営業利益率は39%~41%と予想している。
また、通期の売上高見通しも4月時点の前年比15~18%増との予測を上方修正し、20%増としたほか、2020年の設備投資計画もこれまでに発表している150億ドル~160億ドルから160億ドル~170億ドルへと上方修正している。同社は、米中貿易戦争がますます激化する中、最先端プロセスへの投資を増やし、Huawei以外の先端半導体ファブレスの需要を取り込む強気の経営戦略を推し進めることで、市場での存在感をさらに増そうとしているようである。