不動産取引に関わるさまざまな業務をテクノロジーで再構築し、これまでにないBtoBサービスを提供していくことを目指しているRENOSY X。他の業種に比べて、紙を用いる業務が多い不動産業界において、同社はAmazon Web Servicesを活用して、不動産業務取引のデジタルトランスフォーメーションを進めている。同社のデジタル化の取り組みはどのような効果を上げているのだろうか。
不動産取引の電子化で、不動産業界の透明性・健全性を向上
RENOSY Xは、住宅ローン申し込みプラットフォームサービス「MORTGAGE GATEWAY by RENOSY」(以下、MORTGAGE GATEWAY )によって、住宅ローンの申し込みや審査などのフローを電子化・オンライン化して、システム上で関係者(顧客、不動産会社、金融機関)をつなぐことで、スムーズな情報共有と透明性の高い審査をサポートしている。
GA technologies 専務取締役執行役員 兼 RENOSY X 代表取締役の清水雅史氏は、同社のビジネスについて次のように語る。
「われわれは不動産業界のデジタルトランスフォーメーションを促進したいと考えています。その手段の1つが、オンラインでできることを増やして、ペーパレスを進めることです。これにより、不動産取引が透明化されることになり、不動産業界の健全性の向上にもつながります」
同社の調査によると、「MORTGAGE GATEWAY」によって、関係者間の情報共有の電子化とオンライン化が実現されることで、申し込みから登記にかかる時間が最大75%、顧客においては申し込みにかかる入力項目が最大98%自動で入力できるという。
不動産を購入したことがある人はご存じかもしれないが、不動産取引は実にアナログであり、時間がかかる。書類を記入する際、1文字でも間違えたら、書き直しが必要になる時もある。MORTGAGE GATEWAYはこうした不動産取引で生じるムダを削減するというわけだ。「紙に記入するにも時間と手間がかかります。MORTGAGE GATEWAYなら、お客さまはどこでも作業ができ、購入に対するモチベ―ションも上がります」(清水氏)
さらに、清水氏は「米国は1人当たりの不動産購入が1以上であるのに対し、日本は1人当たりの不動産購入数が1を切っています。われわれは不動産取引のプロセスの効率化を図ることで、トランザクションがもっと増えることを期待しています。その結果、不動産業界のデジタルトランスフォーメーションも進むはずです」とも語る。
AWS活用でビジネスロジックへの注力を実現
「MORTGAGE GATEWAY」をはじめ、同社のシステムを支えているのが、AWSのクラウドサービス群だ。RENOSY X Product Development Division 所属の日平大樹氏は、「AWSを利用すると、自分たちが作らないで済むので、開発のスピードが上がり、コストを抑えることができます。その結果、われわれはビジネスロジックに集中することができます」と語る。「MORTGAGE GATEWAY」の構築自体は、3カ月程度で完成したという。
RENOSY Xでは、Dockerベースのコンテナを利用しているため、ソースコードの管理も容易だ。さらに、運用管理も自動化することで、「相当ラクになっている」と、日平氏は話す。加えて、Web/モバイルアプリのユーザー管理サービス「Amazon Cognito」で認証を行うとともに、コンタクトサービス「Amazon Connect」の検証も進めている。
AWSの運用については、グループ会社であるGA technologiesに専任チームがあり、サポートを受けているが、日平氏自身もAWSのコミュニティに参加して、さまざまな情報を得ているそうだ。
また、日平氏はAWSのセキュリティの堅牢性にも言及した。「AWSは、金融機関がクラウドサービスを利用する上で必須となる安全基準であるFISCに対応しており、知見があります。このことは、AWSに対する金融機関の信頼性につながります。金融機関においても、自社でインフラを保有するよりもAWSでインフラを運用したほうが安全という認識ができています」と語っていた。
アーキテクトにAWS Loft Tokyo、使えるリソースは使うべし
こうしたRENOSY Xの取り組みを踏まえ、アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業開発部 ソリューションアーキテクトの塚田朗弘氏は「マネージドサービスをうまく使うことで、インフラのことはAWSに任せて、お客さまはビジネスに注力してください」と話す。
また、「コミュニティも活用してほしい」と塚田氏は言う。AWSは開発者やスタートアップの支援に力を入れており、コミュニティの活動が活発なほか、スタートアップおよびデベロッパーのための施設「AWS Loft Tokyo」も展開している。
「お客さまはAWSに関する情報をすべてキャッチアップする必要はありません。われわれのアーキテクトに相談いただけば、必要な情報を提供できます。 AWS Loft Tokyoも含め、AWSのリソースを使い倒してください」という。
清水氏は今後の展望について、「MORTGAGE GATEWAYに参加する金融機関や不動産会社を増やしたい」と語る。不動産業界のオンライン化を進めるには、まずは関わる人を増やしていく必要がある。「よりよいサービスを提供することで、不動産業界全体のデジタルトランスフォーメーションを図っていきたい」と清水氏。他の業種に比べてデジタル化が遅れている不動産業界だが、RENOSY Xの取り組みが起爆剤となることを期待したい。