東京大学(東大)と大日本印刷(DNP)は7月13日、2018年に開発した独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術を進化させることで、薄くて自在に伸ばせるフルカラーのスキンディスプレイならびに駆動・通信回路および電源を一体化した表示デバイスの開発に成功したことを発表した。
同成果は、東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫 教授、大日本印刷 研究開発センター 部長の前田博己 博士らによるものとなる。
今回の研究は、身体上で直接何らかのメッセージを表示することで、相手をより近くに感じる可能性を探るために進められているもの。染谷教授は、「スマートフォン(スマホ)はスイッチをオンにして見せないといけないが、手は直接見ることができるので、身近に感じられるのではないか」とスマホというデバイスを間に挟まないで、直観的に見て理解できることの意味について説明。伸縮性デバイスを皮膚に貼り付けることができるようになってきたこともあり、実際にそうやって貼り付けたデバイスにさまざまな情報を遠隔で表示することで、コミュニケーションがどのように変化していくのかを調査していきたいと今後の抱負を語る。
今回開発された表示デバイスは、厚み1mmのシリコンゴムシート上に1.5mm角のフルカラーマイクロLEDを4mmピッチで12×12個(144個)配置したほか、Bluetooth Low Energy(BLE)、ドライバIC、バッテリを一体化した電源ユニットを組み合わせて利用する。連続表示可能時間は、「バッテリ性能による」(DNP前田部長)とのことであるが、今回の開発品としては30分程度。表示デバイス側の技術としては、130%の状態への100万回の引っ張り状態であっても、抵抗値の変化はほぼないことを確認するなど、ほぼ完成の域に達しているとのことで、解像度の向上やバッテリ寿命の向上、電源/BLE/ドライバ回路の小型化などの改良といった伸縮性を有するデバイスの構造最適化や製造プロセスの開発を併せ、今年度より、すでに同様の技術を使ったウェアラブルセンサのPoCを用いた実用化検証を進めているという。
なお、染谷教授は、「今回の技術は、表示できる情報量を考えると、あくまで表示装置としてスマホと競合するものではない。一方で、スキンディスプレイでスタンプマークを送るといった、人と人をつなぐ効果を打ち出せれば、スキンディスプレイとしての優位性を出せると思っている」とし、あくまで解像度ではなく、壊れにくく、安価に製造できるという表示デバイスという点を打ち出し、スマホと連携した表示デバイスとして提供していければ、としている。