Appleが2020年6月に打ち出した自社設計SoC(Apple Silicon)をMacに搭載するという取り組みは、2020年末までにその最初の製品が市場に提供される見込みとなっているが、台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceは、TSMCの5nmプロセスで製造されるその最初のSoCの製造コストを100ドル未満と予測している。
同社によれば、TSMCでのウェハ投入に関するAppleの現在の計画によると、2020年はiPhoneおよびiPad用のSoCが引き続き生産される見通しだという。現在は、2020年後半にリリースされる予定の新しいiPhone用のA14 Bionic SoCの量産が進められているほか、2020年第3四半期には、2021年にリリースされる新しいiPad向けA14X Bionic SoCの少量生産で開始される予定だとしており、こうしたスケジュールを踏まえると、「Developer Transition Kit(DTK)」として提供されているA12Z BionicによるMacはともかく、新規開発のMac向けSoCの本格量産は2021年第1四半期以降となり、Apple Silicon搭載Macの本格的な立ち上がりは2021年下期以降になるとしている。
TSMCの5nmプロセスでIntel超えの性能を目指す
スマートフォンを例に挙げるまでもなくArmベースのSoCは、消費電力という観点からはIntelなど競合アーキテクチャのSoCよりも有利である。また、Armアーキテクチャを採用した日本のスーパーコンピュータ「富岳」がスパコンの性能ランキングTop500の2020年6月版で1位を獲得するなど、近年はその演算性能も大きく向上させてきており、Intelと戦えるまでになってきたと言える。
また、プロセス技術としてもTSMCはあくまでコマーシャルプロセスとしての値であるがIntelと比べて1~2世代ほど進んでおり、TrendForceでは、TSMCが技術的にリードする状況となっていることも、Appleが自社設計SoCにシフトすることを決意させた理由の1つである可能性があるとしているが、最大の要因は、コスト効率とエコシステムの構築を強化したいという思惑がAppleにあるためではないかとしている。
Appleが自社設計SoCを製造するためにはファウンドリに製造を委託する必要があるが、Apple Siliconは最先端の5nmプロセスを採用しながらも、十分な数量が供給されるため、その製造コストについてTrendForceでは100ドル未満と見積もっており、200ドルを超す価格で販売されているIntel Coreプロセッサと比べれば、かなり高いコスト効率を達成できるとみている。
Intelも2021年に10nmプロセスをCPUに適用するとしているが、TSMCも5nmの次のプロセスなどの提供を予定しており、先行してプロセスの微細化を果たすことでより多くのトランジスタの搭載を可能にしようとしている。そのためコンピューティングパフォーマンスと消費電力の点で、Intel CPUよりもApple Siliconがそれなりに長い間優位性を示す可能性が高いとの見方をTrendForceでは示している。