香港は、世界の電子機器製造に向けた半導体チップの一時保管場所として重要な役割を担ってきたが、米国商務省は6月29日、中国政府が新たに制定した「香港国家安全維持法」に対し、「米国の機密技術が中国政府に転用されるリスク」が高まるとし、米国が香港にとっていた優遇措置を一時停止したことを明らかにしたことを受け、半導体市場調査会社のTrendForceは、この措置について、半導体企業や商社が香港を介して機密情報を含む製品を中国に輸出するリスクを直接的に減らそうとする意図をもったものであるとの見方を示し、その結果、半導体製品の現在の地政学的集中とチップ製造業者の生産戦略を劇的に変える可能性があるとの予想を公表した。
すでに米国商務省は2020年4月27日に、米国の特定製品や技術が民間のサプライチェーンを通じて、武器や軍用機、監視技術などの開発に活用されることを防ぐ名目で中国、ロシア、ベネズエラが入手できないようにすることを目的に輸出管理措置の強化を実施しているが、今回の香港に対する優遇措置の一時停止も、今後、輸出管理規制あるいは事実上の禁止へと発展するのではないかとTrendForceは予測している。
また、TrendForceの分析によると、すでに半導体サプライチェーン関係者たちは4月の輸出管理規制の強化を踏まえ、変化に対応するシナリオの調査と、それに対応する戦略的調整をすでに開始しているという。
国際関係の大幅な変化により、半導体部品などの技術製品を香港経由で中国に輸出したい場合、企業は特別輸出許可の申請に必要な時間を考慮するだけでなく、他の要素も考慮する必要が出てくることとなる。これらの要素には、製品の製造プロセスと配送ルート、および製品の配送先が含まれ、輸出企業は規制に違反しないように細心の注意を払った計画を練る必要があると同社は指摘している。
なおTrendForceでは、台湾の半導体企業がファウンドリ、OSAT、およびIC設計業界で重要な位置を占めていることから、米国の中国に対する輸出規制厳格化に直面して、台湾企業がそうした輸出規制の影響を受けないように、これまで以上に注意する必要があるとしている。