英国に本拠を置くハイテク市場動向調査会社Omdiaが、2020年第1四半期の世界半導体企業売上高(最終確定値)ランキング・トップ10を発表した。
同四半期のトップ10の売上高合計は、PCとサーバの売り上げが新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて伸びたことにより、前四半期(622.4億ドル)比で2.1%増となる635.8億ドルとなったが、半導体業界全体の売上高は同2.0%減の1101億ドルのマイナス成長という結果となった。
Omdiaは、従来、市場シェアの成長率を通期で比較していたが2019年の前例のない半導体市場の低迷と2020年の新型コロナのパンデミックにより、年間での比較の意味が薄れ、逐次的な変化に注目したほうが良い状況にあると今回の調査結果の意味を説明している。
Omdiaの半導体製造担当シニアアナリストであるRon Ellwanger氏は、「第1四半期は、主要な半導体サプライヤの多くが、クライアントPC、エンタープライズPC、およびサーバに対する強い需要の恩恵を受けた。新型コロナウイルス感染防止のために強いられた在宅勤務は、ロックダウンの中、消費者が友人、家族、顧客、仕事仲間とのつながりを維持しようとしたため、PCに対する需要の増加に拍車をかけた。また、この現象は企業のPCとサーバ需要を刺激し、ITサービスベンダにクラウドサービスに対する消費者の需要の増加に対応することを求める結果となった。こうした動きの結果、上位の半導体サプライヤが提供するチップに対する需要の増加につながった」との見解を示している。
こうした背景を受けて、データ処理に関連するアプリケーションのカテゴリは、第1四半期に唯一、前四半期比でプラス成長を遂げた市場となった(前四半期比0.9%増)。
HiSiliconとQualcommが驚異の成長率
同四半期、トップ10社中、米国政府のエンティティリストに載せられ、米国製品の輸出禁止だけではなく、米国製製造装置を使っているファウンドリへの生産委託も禁止されてしまった中国の通信機器・スマホメーカーHuaweiの子会社であるファブレスIC設計会社HiSiliconが前四半期40.3%増という飛び抜けて高い成長率を示した。
次いで、米国のワイヤレス通信半導体サプライヤであるQualcommが同14.6%増という成長率を見せており、共に中国の5G需要が立ち上がったことにより恩恵を受けたという。
「Qualcommは、中国政府が5Gインフラストラクチャの導入で国内経済を活性化させる助成金などの動きを活用して売り上げを伸ばしている」とEllwanger氏は語っている。Huaweiの子会社であるHiSiliconは、米国政府によってHuaweiグループに課された規制にもかかわらず、米中貿易戦争の影響から身を守ることに成功したようだ。同社は、米国国務省の新たな規制により、2020年9月以降、台TSMCからスマートフォン用プロセッサの納入が絶たれるが、それを見越して半導体チップの十分すぎるほどの在庫を積み上げたようである。
メモリメーカーの売り上げが堅調に増加
マイクロプロセッサの世界的リーダであるIntelの売り上げは、第1四半期にPC向けチップの需要が増加したにも関わらず同1.8%減となった。同四半期のコンピュータ需要の急増はローエンドに集中し、低コストのプロセッサとチップセットへの需要が高まったため、売り上げの増加にはつながらなかった模様だ。一方、半導体メモリサプライヤ主要3社(Samsung、SK Hynix、およびMicron)は、堅調に売り上げを伸ばすことに成功したという。各社、エンタープライズ向けSSDで使用されるNANDがデータ処理市場からの需要の高まりを受けた結果で、NANDの売上高は、同四半期で同6.9%増となり、同四半期中の各デバイスカテゴリの中で最高の成長率を示す結果となったという。
なお、2019年第4四半期のランキングに11位へとランクを落としたキオクシア(旧 東芝メモリ)は同10%増のプラス成長を示し、再びトップ10入りを果たすことに成功している。