スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が22日、オンラインで開かれた国際会議で発表され、理化学研究所の次世代機「富岳(ふがく)」が1位となった。先代の「京(けい)」以来、8年半ぶりに日本勢が首位を奪還した。他の3つのランキングでも1位となり4冠を達成し、実力の高さを示した。

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    世界最高性能の実力を示した富岳(理化学研究所提供)

TOP500は性能評価用プログラムの処理速度で性能を競うもので、年2回発表。富岳は毎秒41京5530兆回(京は1兆の1万倍)で、2位の米国「サミット」の2.8倍の性能を記録し圧勝した。日本は京が2011年に連覇したが翌年に陥落。その後は中国が実力を高め、米国と2強体制を築いていた。

また富岳は、産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」と、グラフ解析の性能を競う「Graph500」でも1位となり、史上初の3冠を達成。さらに、人工知能(AI)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL-AI」のランキングが今回から発表され、ここでも1位となった。

理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は23日、オンラインで開催した会見で「富岳は指標で世界1位を取ろうと思って作ったマシンではない。シミュレーションやビッグデータ、AIなど、あらゆるアプリケーションで最高性能を発揮するようデザインした。今回、4冠を達成したのはその結果だ」と述べた。

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    オンラインで会見する松岡聡センター長

京はTOP500で毎秒1京510兆回の計算速度を記録したが、昨年8月に運用を終了。富岳はその後継機として計算性能、消費電力、利便性などの総合力で最高水準を目指し、理研と富士通が共同開発した。科学の課題解決や、政府が提唱する超スマート社会「Society 5.0」の実現で世界を先導する成果創出を掲げる。完成時の性能は、現在よりさらに高まるという。神戸市のポートアイランドにある理研計算科学研究センターの、京の跡地に設置された。

開発の政府負担はアプリケーション開発を含め、約1100億円の見込み。富岳は富士山の異名で、性能の高さと利用の裾野の広がりを示すとして理研が命名した。運用開始は来年度の予定だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、治療薬候補探しや飛沫感染予測の研究などで試験利用が始まっている。

TOP500のランキング上位は次の通り(名称、組織、国、毎秒の計算速度)。
1位 富岳 理研計算科学研究センター(日本)41京5530兆回
2位 サミット オークリッジ国立研究所(米国)14京8600兆回
3位 シエラ ローレンスリバモア国立研究所(米国)9京4640兆回
4位 神威太湖之光 無錫スパコンセンター(中国)9京3014兆回
5位 天河2A 広州スパコンセンター(中国)6京1444兆回
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12位 AI橋渡しクラウド 産業技術総合研究所(日本)1京9880兆回
19位 オークフォレスト・パックス 筑波大・東京大(日本)1京3554兆回
28位 ツバメ3.0 東京工業大(日本)8125兆回

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