レッドハットは6月23日、新年度事業戦略説明会を開催し、代表取締役社長を務める望月弘一氏が2021年度の事業戦略を発表した。新年度も前年度に引き続き、オープンハイブリッドクラウド戦略を掲げるが、前年度は「(オープンハイブリッドクラウドの)戦略から実践」を目標としていたのに対し、今年度は「実践から融合」を目指す。
望月氏は、前年度の成果として、「ハイブリッドクラウド基盤における一貫性の追求」「クラウドネイティブアプリケーション開発におけるスピード向上への貢献」「オートメーションと管理における自動化の推進」の3点を紹介した。
ハイブリッドクラウド基盤において、カギを握る技術はコンテナだ。望月氏はレッドハットのコンテナ基盤「Redhat OpenShift」について、「国内の顧客企業数は3ケタを突破しており、3倍に増えている」と語り、その好調ぶりをアピールした。前年度は、コンテナをマネージドサービスによって利用したいという企業が増えたことから、マネージドサービス事業も拡張された。
また、クラウドネイティブアプリケーションの開発においては、OpenShiftとミドルウェアによって構築された環境でDevOpsを展開する企業が増えたほか、レガシーなシステムのモダナイゼーションが進んだという。「ミドルウェアとコンテナを組み合わせた企業が増えてきたということは、コンテナが浸透してきたことの現れ」と、望月氏は語った。
こうした成果を踏まえ、「新年度もオープンハイブリッドクラウド戦略を推し進めるとともに、オープンな文化とテクノロジーによって、顧客のデジタルトランスフォーメーションに寄与する」と、望月氏は説明した。
新年度は「ハイブリッドクラウド基盤」において、Edgeからクラウドコアやプライベートクラウドまで、インフラのモダナイゼーションを推進する。望月氏は「コンテナを導入する企業を倍増させるとともに、1つの企業におけるユーザー数も増やしていく」と、コンテナビジネスへの意気込みを語った。ここで、カギとなるのがマネージドサービスだという。
これまで、同社の大半のユーザーは自社でOpenShiftのマネージドサービスを運営していたが、もっと簡便かつスピーディーにマネージドサービスを利用できるようにするため、マネージドサービスのラインアップを拡大している。現在、専用マネージドサービス、パブリッククラウド・ベンダーによるオンデマンド・マネージドサービス、「OpenShift Managed Practice Program」に参加する国内パートナーが提供するサービスを利用できる。
「クラウドネイティブアプリケーション開発」においては、開発のスピードアップに貢献するため、クラウドネイティブなアプリケーションとレガシーアプリケーションの近代化の連携を加速する。望月氏は新たな施策として、「OpenShift Serverless」と新たなJavaランタイム「QUARKUS」を紹介し、「これらは他社との差別化のポイントでもある」と述べた。さらに、同氏は、「アプリケーション開発のスピードを上げることで、アジリティや生産性の改善につなげていく」と語っていた。
「オートメーションと管理における自動化」については、自動化の適用範囲の拡大を目指す。「アフターコロナにおいては、ITの自動化が急務となる」と望月氏は述べた。
IBMとの統合の効果については、「これまでも説明してきたが、IBMにはインダストリーの知見、顧客との深いつながり、営業力といった強みがあるが、それらにわれわれの強みであるオープンカルチャーを融合させることで、効果が出てきている。ただし、こうした連携はIBMに限ったことではなく、他社とも連携を深めていきたい」と、望月氏は語っていた。