日本においては、新型コロナウイルス感染症拡大を防止するために出された緊急事態宣言も解除され、少しずつ働き方が変化していくことが予想されている。"ニューノーマル(新しい生活様式)"という大きな変化を耳にする機会も増加しているが、企業向けオンラインストレージの米Boxは、ファイルやフォルダから見える粒さな変化をブログ記事「Work Unleashed ― Where, When, and How We Work is Changing」に掲載している。4月時点の個人情報を特定できない形に匿名加工したビッグデータの分析だが、企業向けオンラインストレージの匿名データから抽出されるテレワークや在宅勤務の特徴という点で興味深いものだ。
仕事をする時間は、これまで通常では平日午前9時から午後5時に集中していた作業時間が分散している。2019年3月と2020年3月とでBoxにあるファイルへのアクセスを比較すると、共に朝の4時~5時が最も少なく午前11時~12時がピークという傾向は同じだが、トラフィックの曲線はなだらかになっているのがわかる。同社では「子供の学校休校、通勤がないことなどが影響して、カーブがなだらかになってきている。仕事は24時間で起こっており、仕事の時間、家庭の時間の境界が曖昧になっている」と分析している。今回テレワークや在宅勤務が初めての経験だという人は多いだろうし、家族も同様のことだ。突然の環境の変化へに割り込みや緊急対応なども考えうる。本来業務外である時間でのアクセスが増加しているが可能な限り、平時の職場同様にメリハリをつけることが理想的だ。家族の理解や自宅環境の整備等、工夫しながら改善したいところだ。
ファイルやフォルダの共有からは、社内だけではなく社外の取引先などとのコラボレーションも増加していることが垣間見える。コラボレーションへの招待数を2020年2月と2020年3月(ともに第3週と第4週)で比較したところ、2020年3月は前月同期比から19%増加したとのこと。どの業種でもコラボレーションは増加しているが、米国では公衆衛生に関連した中央政府と州政府とのコラボレーションが最も増加している。3月の後半に送られたコラボレーションの招待数は、2月の後半と比較して142%増加したと報告している。
また、業種ごとにやりとりが多いファイル形式の上位10種も公開している。建築・エンジニア・建設、教育、エネルギー、財務サービス、ヘルスケアとライフサイエンス、マーケティングと広告、メディアとエンターテインメント、サービス、公共、技術の10の業種で、トップはJPEGかPDFのどちらか。PNGやTIFF、ExcelやWordといった「Microsoft Office」のファイル形式も、多くの業種で利用されている。その中に混じって、業種固有のものとして、AutoDeskのAutoCAD(建築・エンジニア・建設、エネルギー)、DICOM(ヘルスケアとライフサイエンス)なども並んでいる。対面でのやりとりが減り、相手と必要な資料を迅速にオンラインで共有していく姿が想像できる。
Boxはパートナープログラムを通じて、業種業界別、業務別と1,000を超えるアプリとの連携が可能だ。Boxの統合機能を利用して連携するアプリとしては、増加が多い順にメッセージ(Slack、Microsoft Teamsなど)、ビデオ会議(Zoom、WebExなど)、オンラインファイル編集(Microsoft Office、G Suiteなど)。メッセージは3月後半、2月後半と比較すると84%増加し、ビデオ会議は71%増加したとのことだ。同社では、統合機能を使ったこれらのアプリケーションの利用が増えているとトレンドを4月の時点で指摘している。テレワークがさらに浸透する現在では、さらに多くのアプリケーション統合機能の利用が進んでいることが予測される。限られた環境下では、できるだけ"シームレス"であることへのニーズが強まっていくのだ。