NXP SemiconductorsとTSMCは、NXPの次世代高性能車載プラットフォームへのTSMCの5nmプロセス技術の採用のために協力することで合意したと発表した。両社は、これによりNXPの車載向け製品設計に関する専門知識とTSMCの最先端となる5nmプロセス技術を組み合わせ、強力な「走るコンピューティング・システム」へ向けた自動車の進化を加速させるとしている。
TSMCとNXPは16nmプロセス技術における製品設計での実績があるが、今回、その協力関係を強化させ、次世代車載向けプロセッサの提供に向け、5nmプロセスでのSoCプラットフォーム開発に着手するとしている。NXPでは、TSMCの5nmプロセスの採用により、コネクテッド・コックピット、高性能ドメイン・コントローラ、自動運転、先進車載ネットワーキング、ハイブリッド駆動制御、統合型シャーシ管理などの広範な機能やワークロードへの対応が可能になるとしている。
TSMCの5nmプロセス技術は2020年時点で、量産適用可能な最先端プロセスであり、NXPはTSMCの5nmプロセスの強化版である「N5P」を採用することで、従来プロセスである「N7(7nm)」世代比で約20%の高速化、あるいは40%の消費電力低減を目指すという。
次世代SoCは、NXPのS32アーキテクチャをベースに、5nmプロセスを使用することで、スケーラビリティや共通ソフトウェア環境を提供する新アーキテクチャを実現することを目指す。これにより、将来のクルマに求められるソフトウェアの簡素化と性能の向上を可能にするとしており、主要顧客に対して2021年にもサンプル出荷を開始する計画であるとしている。
なお、TSMCは5月28日、自動車で活用されるAI推論エンジン設計までの時間を短縮する7nmプロセス採用の車載IC設計プラットフォーム(Automotive Design Enablement Platform:ADEP)の提供を開始したと発表したばかりだが、今回、そうした車載向けの取り組みを強化する目的で、NXPの車載プラットフォーム向けに5nmプロセスの強化版「N5P」を提供することにした模様だ。従来、車載半導体の設計・製造には、信頼性や安全性の見地から伝統的に成熟したプロセスが使われてきたが、「走るコンピューティング・システム」ともいわれる自動運転車の実現を目差し、近年では最先端のプロセスを各社が競って採用するようになってきている。