TrendForceは、2020年第2四半期(4~6月期)におけるファウンドリ市場に関する予測を発表。それによると、トップのTSMCの同四半期の売上高は前年同期比30.4%と大きく伸ばし、3か月売り上げで100億ドルを突破し、市場シェアも51.5%まで拡大させる見込みだという。
2位のSamsung Electronicsも同15.7%増と奮闘する見通しだが、トップとの売上規模の差は3倍近くに引き離される見通しである。また、3位のGLOBALFOUNDRIES(GF)と4位のUMCの差が縮まり、追いつきそうな勢いをUMCが見せている。
ファウンドリ売上高トップ10の同四半期の合計売上高は同23.1%増の189億ドルに到達するとしているが、これは第1四半期における受注の減少がなかったうえに、クライアント各社が第2四半期に既存のデバイスの注文に加えて、新型コロナウイルスのパンデミックに伴って生じた新たな医療向けアプリケーションに対する注文が増加したためであるとTrendForceは分析している。
TSMCのHuawei受注中止の影響はどの程度か?
TSMCは第2四半期、レガシープロセスで製造する半導体デバイスに対する安定した需要に加え、5Gスマートフォン向けアプリケーションプロセッサ、高性能コンピュータ(HPC)、および在宅勤務(WFH)に使用するCPU/GPUなどに向けた先端プロセス製品需要のおかげで、大きく成長する見込みである。
TSMCは、主要なクライアントの1社であるHuaweiに対する米国の制裁の影響により、Huaweiからの受注を中止したと伝えられているが、その影響に対してはAMDやNVIDIA、MediaTek、Qualcommなどのほかのクライアントが注文数を増やす計画があることから、長期的に見て、影響は少ないものとTrendForceでは予想している。
大手各社の動向
業界2位のSamsungは、華城ファブにおけるEUV生産能力を増やし、モバイル分野以外の製品アプリケーションの拡大を図っており、そうした取り組みの結果、同四半期の売上高は2桁増となるとTrendForceはみている。一方、同3位のGFは、自動車向けチップとマイクロプロセッサに対する需要減少の影響を受け、TSMCやSamsungに比べては低めの成長率に留まるものと予想されている。
その3位の座を目指して猛追するUMCはドライバICならびに新型コロナに関連する医療向け半導体の需要増により、2桁成長が期待されている。そして同5位のSMCICもNORやeNVMなどの12インチウェハでの生産のほか、PMIC、指紋センサチップ、一部の汎用MCUなどの8インチウェハでの生産品の需要増により、2桁成長が予想されている。ただしSMICについてTrendForceでは、Huaweiに対する米国の制裁により、同社製品の生産を受注している同社の稼働率について、今後、影響を受ける可能性があると指摘している。
最終製品の動向に影響を受ける下位ファウンドリ群
また、同6位のTowerJazzは、RFおよびシリコンフォトニクストランシーバ、5Gインフラストラクチャおよびデータセンター建設に対する継続的な需要の恩恵を受けたが、一方で家電向けに対する売り上げの減少を補うことができず、さらに車載CMOSイメージセンサ(CIS)に対する強い需要がある一方で自動車市場そのものの需要が不透明であり、全体的な売上高も微増に留まるとの見方を示している。
一方、同7位のPowerchip Semiconductor Manufacturing(PSMC)はTowerJazz同様CISの強い需要を追い風に売り上げを大きく伸ばす見通しだという。こちらのCISは主にIPカメラ、エントリーレベルおよびミッドレンジのスマートフォン、セキュリティおよび監視カメラ向けであり、新型コロナの影響で需要が伸びた分野といえる。またVanguard International Semiconductor(VIS)も、中国クライアントからの大型ディスプレイ向けドライバICの需要増と、サーバおよびデータセンター向けPMICの需要増で高い伸びが期待されている。
ただし同9位の中Hua Hong(華虹半導体)は同四半期に、300mmウェハの生産能力増強に注力していることもあり、売り上げが唯一トップ10中マイナス成長になるとみられている。そして同10位のDB HiTekは韓国クライアントからのディスプレイドライバICとCISの需要増が見込まれており、プラス成長が期待されているが、これについてTrendForceではクライアントによるコンポーネント供給不足の可能性に対する先取り在庫対策と見なしており、DB HiTekの将来需要は不透明であるとしている。
不透明さが増す2020年後半の市場動向
なお、TrendForceでは、同第2四半期の需要拡大は今後の先行き不透明から顧客が在庫を率先して積み増しておこうという思惑が大きく、年後半はその在庫調整のため、ファウンドリ市場は潜在的に減速する可能性があるとしており、新型コロナの感染拡大による影響と米中貿易戦争の影響を注視していく必要があるとしている。