国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は6月9日(米国時間)、2021年の半導体前工程ファブに対する半導体製造装置の投資額が前年比24%増の677億ドルとなり、過去最高を更新する見込みであると発表した。
2020年2月発行の市場予測レポートで示された額は657億ドルであったので、そこから10%ほどの上方修正がなされたこととなる。ただし、2020年の投資額については、2020年2月時点で発表した前年比3%増を同4%減に下方修正している。これは、新型コロナウイルスからの回復時期の予測を1四半期ほど後回しにした結果、下方修正をする結果となった。
SEMIでは、2021年はすべての半導体製品分野で設備投資額が堅調に成長すると予測しているが、中でも半導体メモリファブの投資額は最大規模の300億ドルとなり、「最先端ロジックおよびファウンドリ」ファブがこれに続き290億ドルと予測している。
設備投資額、NANDは2020年に30%増、DRAMは2021年に50%増
メモリファブの内、3D NAND向け設備投資額は2020年に前年比30%増となり、2021年も同17%増となり、半導体投資の成長をけん引するとしている。
また、DRAMは2020年は同11%減となるものの、2021年に同50%増と大きく伸びるとSEMIは予測している。ロジックおよびファウンドリ向け設備投資は最先端ライン向けが中心となり、2020年は同11%減となるが2021年には同16%増と伸びる見込みだという。
イメージセンサは2020年に60%増、2021年も30%増
製品分野によっては、投資額は小さいものの驚異的な成長率を示すものもあるという。イメージセンサは、2020年に前年比で60%増、2021年も同36%増と目を見張る急成長が続く見込みである。アナログおよびミクスドシグナルも2020年に同40%増、2021年に同13%増、パワー関連デバイスも2020年に同16%増、2021年に同67%増と大きく伸びるものとSEMIは予測している。
半導体メーカーが進める在庫の積み増し
SEMIは、今回の予測更新にあたり、2020年の設備投資の底が、第1四半期から第2四半期へシフトするとしている。四半期ごとの投資額の推移を見ると、2020年は長期にわたる新型コロナウイルス感染症の影響が明らかである。
世界のファブにおける半導体製造装置投資額は2020年第1四半期に前四半期比15%減となったが、これは2月の時点で予測した同26%減と比べると11ポイントほど上回る予想外の結果となった。3月に入って、外出禁止令により世界中のオフィス、商店街、学校から人がいなくなると、新型コロナウイルス感染拡大への対策として在庫を積み上げる企業が出てきた。特に新型コロナ感染拡大と共に、ノートブック、ゲーム機、ヘルスケア機器といったITやエレクトロニクス製品の需要が急増していった。6月後半にも予定されている中国への半導体製造装置の輸出禁止に対する不安にあおられた在庫の積み増しも、第2四半期には予想されるという。
2020年後半には設備投資が活発化も、通年ではマイナス成長に
SEMIは、2020年後半に設備投資が活発化することを予測しているが、2020年通年では2019年の前年比8%減に続いて同4%減と2年連続のマイナス成長に陥る見込みである。
なお、2020年後半には設備投資の活発化が期待されているわけだが、パンデミックへの恐れが解消されたわけではない。パンデミック起因のレイオフで、米国だけでも4000万人の労働者が失職し(5月時点)、企業倒産の影響はコンシューマ市場へと波及する見込みである。例えば、失業者率の増加が、スマートフォンや新車の販売額減少につながるということである。こうした下降気流の中にあっても、デジタル化やコミュニケーションのニーズが半導体産業の成長をけん引し、クラウドサーバ、サーバストレージ、ゲーム機、ヘルスケア機器などが、メモリやIT関連機器の需要を押し上げるとSEMIは見ている。