世界半導体市場統計(WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS:WSTS)は6月9日、「2020年春季世界半導体市場予測」を発表し、2020年(通年)は前年比3.3%増との予測を示した。

これはメモリ市況の回復に因る部分が大きく、メモリを除く場合、前年比0.7%減とのマイナス成長予測となる。また、2021年の半導体市場は同6.2%増と全体的に回復するものと予測されている。なお、2019年の半導体市場(実績値)は前年比12.0%減であったという。米中貿易摩擦などの地政学的リスクが世界経済成長の失速を招き、半導体市場も大きな影響を受けたとWSTSは分析している。

新型コロナの影響で予測会議を開催できず各社の平均値で算出

WSTSの市場予測は、通常、加盟会社(45社)がWSTSの半導体市場統計を参照して作成した予測値を基に、マクロ経済や主要電子機器の動向も参考にしながら検討を加えて議論を重ねて作成されてきた。しかし、2020年春季半導体市場予測会議は、新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックの影響で開催が中止された結果、従来のプロセスを経た予測値作成が困難であったことから、加盟会社が3月までの実績に基づいて作成した成長率予測の平均値を基に予測を作成したという。

WSTSは今回、データに関する議論ができなかったため、WSTS事務局が予測の背景について以下のように分析している。

  • 2020年の半導体市場は2019年の低迷からの反発で年初から回復基調にあったものの、新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックを背景にグローバルでの経済活動が停滞した影響を受けている。先行きは依然不透明であるものの、感染対策として世界各国で導入が進んだ在宅勤務や、巣籠り需要の増加などライフスタイルの変化による恩恵を受ける分野もあり、それらが下支えすると考えられる。
  • 2021年については新型コロナウイルスを巡る状況は現段階では引き続き不透明ではあるものの、一定程度状況が改善するという前提の下、世界経済も回復に転じるとみて半導体市場も成長が加速する予測となったと考えられる。

2020年の半導体市場 - 地域別では米国のみ2桁成長の予測

2019年の半導体市場は前年比12.0%減の4123億ドルであったが、中でも米中貿易戦争で中国の一部企業への輸出を禁止された米州勢の売り上げが前年比23.7%減と大きく落ち込んだ。また、日本、欧州、アジア太平洋地域(日本を除く)も同7~9%台の減少となった。

一方、2020年は米州が同12.8%増、アジア太平洋が同2.6%増、日本と欧州は同4%台の減少が予測されている。世界の半導体市場に占める日本市場の割合は9%の見込みとなっている。また、2021年は、日本を除く他の地域は同6%前後の成長率で、日本だけ同3.3%ほどの成長率と予測されている(日本の成長率はドルベース換算によるもの)。

  • WSTS

    地域・国別半導体市場実績および2020~2021年予測 (出所:WSTS、2020年6月)

2020年の製品別動向 - メモリは2桁増もアナログが5.8%の減少

2020年における製品別市場(ドルベース)は、ディスクリートが前年比6.6%減の223億ドル、オプトが同5.1%減の394億ドル、センサが同2.1%減の132億ドル、IC全体が同5.3%増の3510億ドルと予測されている。また、IC製品別では、メモリが同15.0%増、ロジックが同2.9%増、マイクロが同2.6%増、アナログが同5.8%減と予測されている。

2021年は、ディスクリートが同5.7%増の236億ドル、オプトが同6.1%増の419億ドル、センサが同4.6%増の138億ドル、IC全体が同6.3%増の3730億ドルと予測されており、IC製品別では、メモリが同11.2%増、ロジックが同3.9%増、マイクロが同1.4%増、アナログが同5.9%増との予測となっている。

  • WSTS

    製品カテゴリ別半導体市場の実績および2020~2021年予測 (出所:WSTS, 2020年6月)

  • WSTS

    製品カテゴリ別IC市場規模実績および2020~2021年予測 (出所:WSTS, 2020年6月)

日本市場は2年連続マイナス成長予測

2019年の円ベースでの日本の半導体市場は、前年比11.2%減の約3兆9187億円であった。2020年も同4.2%減の約3兆7535億円と2年連続のマイナス成長となる予測だが、2021年は同3.3%増の約3兆8787億円になるとも予測している。

なお、WSTSの「半導体市場」は、半導体メーカーの国籍や生産工場の場所には関係なく、「半導体製品が半導体メーカーから第三者に販売された地域」を意味する。この「第三者」には、半導体ユーザである電子機器メーカ、EMS、半導体を扱う商社などが含まれる。例えば「日本市場における販売額」とは世界の半導体メーカが日本において第三者に販売した半導体製品の金額をいう。購入者が、購入した半導体製品を外国に運んで電子機器に組み入れたとしても、その半導体製品は日本市場に含まれる。WSTSの会員は現在45社のみであるので、それ以外の半導体企業の売上高予測は、外部の調査会社などから情報提供を受けているようだがその詳細は公開していない。