国立がん研究センター(NCC)、国立国際医療研究センター(NCGM)、シスメックスの3者は6月11日、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)による診断・医薬実用化支援の一環として進めている、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原・抗体検査法に関する共同研究における抗体検査の臨床性能評価結果を発表した。

それによると、同評価に関する共同研究では、NCCおよびNCGMが、臨床評価用の検体を提供するとともに、臨床現場の観点から、臨床的に必要とされる検査法の開発提言を担当。一方のシスメックスは、化学発光酵素免疫測定法を用いて開発した、鼻咽頭拭い液中の抗原および血液中の抗体(IgG、IgM)に関する検出試薬と、両センターから提供された検体を用いて測定および臨床性能解析を担当している。

シスメックスが開発した抗体検出試薬は、自社の全自動免疫測定装置とともに用いることで、ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原)ならびにスパイクタンパク質(S抗原)に特異的に反応するIgG抗体ならびにIgM抗体を個別に検出することが可能であり、これまでの研究から同検出試薬を用いた「SARS-CoV-2陰性群」と「退院時のSARS-CoV-2患者群」間における血中のN抗原、S抗原に対するIgG抗体の濃度の比較において、患者群で抗体量の上昇がみられ、陰性群と明らかな弁別性能を示す結果が得られらという。

今回の結果について研究グループは、同検出試薬が、幅広い疫学的研究や、ワクチンの効果モニタリングなどの臨床応用へ活用できるとともに、今後の治療法開発において重要な知見となることを示唆していると考えられると説明している。

  • 新型コロナウイルス

    今回の検出試薬では、陰性群(n=300)と退院時の患者群(n=33)の間においてIgG抗体の定量値に統計学的な有意差が確認された (出所:国立がん研究センターWebサイト)