神戸市と日本マイクロソフト(以下、MS)は6月4日、相互の連携を強化し,AIやIoTなどの先端技術の活用による行政課題の解決と、スマートシティの実現を目指す包括連携協定を締結したと共同記者会見で発表した。
神戸市は新型コロナウイルス対策の取り組みとして、MSをはじめとした企業や団体と協働し、業務効率を高めるアプリケーションを3つ「Microsoft Power Platform(※1)」を活用して開発・提供してきた。
(※1)日本マイクロソフトが提供する業務アプリケーション作成、データ分析・洞察の取得、業務プロセス自動化、チャットボット作成など、さまざまなツールを提供する統合型クラウドサービス。
1つ目は、2020年5月20日より開始している「新型コロナウイルス健康相談チャットボット」。
神戸市では、新型コロナウイルスの専用健康相談窓口等への問い合わせが殺到し、職員の業務時間の多くを問い合わせ対応に費やす必要があったという。そこで簡単な問い合わせはチャットボットや自動音声通話などで対応することで、職員がより緊急度の高い業務に注力できるようになった。それだけでなく、聴覚障がい等の方への即時対応も可能になったという。
2つ目は、5月29日より提供している、申請の審査状況や振込予定が確認可能な「神戸市特別定額給付金申請状況検索サイト」。
新型コロナウイルスの相談と同様に、特別定額給付金の給付手続きに関しても、申請後の審査や振込手続きについての問い合わせもピーク時には40,000件/日に達し、対応に追われていた。「神戸市特別定額給付金申請状況検索サイト」を導入してからは、こちらのサイトへのアクセス数は35,000件/日程度まで伸び、逆にコールセンターへの問い合わせが、3,000件/日まで減少したという。
また、6月5日からは、日本初となる「 音声通話による特別定額給付金の申請状況等自動案内サービス」を開始する予定。これにより、スマートフォンやパソコンなどのインターネットの環境を持たない市民も申請状況を確認できるようになる。
3つ目は、6月1日から提供している「データ公開サイトの統合 (ダッシュボード)」。
ダッシュボードを導入する以前は、コロナに関連する情報が神戸市HP上で分散して公開されており、市民が必要な情報にたどり着きにくかった。市職員も、コロナ陽性判定者情報のリアルタイム公表に向けた視覚化や、不要不急の外出自粛要請に対する人流情報の解析に多くの時間を費やしていたという。コロナ感染関連情報をダッシュボードに統合することにより、必要な情報にたどり着きやすく、よりリアルタイムな情報提供が可能になったという。また、更新作業に関するデータの取得・加工・可視化までの自動化を実現することで、更新作業の効率化・省力化にもつながっている。
Web会議で参加したMS 執行役員常務クラウド&ソリューション事業本部長の手島主税氏は「新型コロナウイルスの対応において、2年分のデジタル変革が2カ月で起きたと言われており、このような急激な変化を後戻りすることなく、ニューノーマルな世界向けて、行政などの機関に対しての支援を進めていきたい」と述べた。
さらに、両者は、これらのシステムを他の自治体でも利用できるように、ソフトウェア開発プラットフォームの「GitHub」にオープンソースとして6月4日から公開するという。
神戸市長の久元喜造氏は「神戸市だけでなく、他の自治体も同様な課題に直面している。せっかく我々が課題解決につながるシステムを開発したのだから、公開して共有するのは当然のことだ」と語った。
また、同連携協定により両者は、新型コロナウイルス対策を契機として、「DXの推進による働き方改革」、「スマートシティ実現に向けたデータ連携基盤の推進」、「デジタル人材育成・交流」「子どもや青少年の学びの支援」の4項目の取り組みを行う。
具体的には、「働き方改革」に関しては、マイクロソフトによる職員向けオンライン研修や、デジタルツールの利活用推進(テレワーク環境、災害時の対応、職員の安否)などを行う。
「スマートシティ実現に向けたデータ連携基盤の推進」に関しては、スマートシティ実現に向けたデータ連携基盤の検討や、市民との接点の改善など、スマートシティサービスの試行プロジェクトなどの活動を行う。
「デジタル人材育成・交流」に関しては、サービスデザイン指向ワークショップや、政策形成やビジネス創出にAIを安全に有効に活用するためのAIビジネススクールなどの取り組みを実施。
そして、「子どもや青少年の学びの支援」に関しては、家庭学習の補完となるオンライン双方向通信、コミュニケーション教育ツールとしてのチャットボットの活用などを行う予定だ。