IDC Japanは6月4日、ワークカルチャー/ワークスペース/ワークフォースといった分野の改革(「働き方の未来」)を推進するためのICTソリューションの導入状況、改革の決定者と予算、改革における促進要因/阻害要因などに関する調査を日本、米国、欧州で実施し、3地域の比較分析結果を発表。
その結果、働き方の未来を実現するために独立した予算を持っている企業の割合は日本が最も低く約4割にとどまったのに対して、米国と欧州が共に8割弱と大きな開きがあることがわかったという。
働き方の未来を実現するために改革すべきだと同社がいう3領域のうち、日本では特にワークカルチャー及びワークフォースにおける遅れが目立ったという。
一方で、事務作業で利用する多くのITツールが属するワークスペース関連のITソリューションについては、日本は他の2地域とさほど差が無かったとしている。
社内の活動に独立した予算を付けているか否かは、経営層のその活動に対する積極性や真剣度の表れと解釈ができると同社は考える。
働き方の未来を実現するために独立した予算を割り当てている企業の割合は、日本が41.0%、米国が75.4%、欧州では78.6%と、日本では働き方の未来を実現するための取り組みが遅れている可能性があるという。
また、働き方の未来を実現するための改革を実行している世界の企業と比較して、自社の取り組みが「進んでいる」と回答した企業は日本では10.5%だったのに対して、米国は41.6%、欧州は20.9%と、日本の自信の無さが目立ったという。
働き方の未来関連の取り組みをワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースの3領域に分類し、それぞれの関連施策やITソリューションの導入状況の分析したところ、ワークカルチャー関連においてデジタルスキルのトレーニングの導入率は日本では31.0%で、米国や欧州と比較して20ポイントから14ポイント低く、また最新の人材採用/管理プラットフォームの導入率は日本では26.0%と他地域と比べて22ポイントから7ポイント低かった。
ワークフォース関連のソフトウェアについては、RPA(Robotic Process Automation)の導入率は日本では28.3%で他地域を大きく上回る一方で、ワークフローの自動化は15.3%と2地域より25ポイントから32ポイント低い。
ワークフローと言えば経費精算や交通費精算、そして多様な稟議書が思い浮かぶが、こういった書類が日本ではまだ紙やメールなどによって処理していることが推測できるという。
ワークフォース関連のハードウェアにはロボット/ドローン、ウェラブル、AR、VRなどを含むが、日本ではこれら全てのハードウェアの導入率が他地域より大きく遅れているとのこと。
ワークスペースについては、「社内の共同作業を推進するためのツール」「仕事で必要なアプリケーションやデータにモバイルデバイスからアクセスできる」など質問項目の多くで日本の導入率は他地域とほとんど変わらなかったという。
同社PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川和子氏は、「今回の調査は(新型コロナウイルスの)パンデミックが起こる前に実施しました。働き方の未来という観点では日本は米国と欧州から遅れている点が目立っていますが、パンデミックを機に、日本企業のIT投資の優先度、さらに企業文化や組織の在り方にまで変化をもたらす可能性があり、働き方の未来の実現に向けた取り組みが一気に進展する可能性があります」と述べている。