村田製作所と帝人フロンティアは6月4日、人が動く際の力などを電気エネルギーに変換し、抗菌性能を発揮する圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」を共同で開発したこと、ならびに同繊維の研究・開発、製造・販売を目的に2020年4月1日付で合弁会社「株式会社ピエクレックス」を設立したことを発表した。
同繊維は、植物から抽出したでんぷんを発酵させて作られた乳酸を結合させたPLA(ポリ乳酸)を原料としている。PLAは、結晶性のヘリカルキラル高分子であり、圧電性を有していることが知られており、PIECLEXはその伸縮で生じる電圧(高くて数V、平均的には1V程度という)を活用して、繊維の中に存在する菌に影響を与えることで死滅させることで、抗菌・消臭作用を得ることを可能としたものだという(抗ウイルス性は2020年6月4日時点で検証中とのこと)。従来の抗菌剤と異なり、金属や有機材を使用しないため環境にやさしい素材であるほか、後加工でないため、半永久的に効果が持続すると考えられている。また、50回の洗濯後でも効果が発揮できることも確認しているという。
合弁会社としてのピエクレックスの資本金は1億円で、出資比率は村田製作所51%、帝人フロンティア49%となっており、本社は村田製作所 野洲事業所内部に設置。ファブレスで、研究開発ならびにブランド展開に特化。実際の遷移の製造などについては帝人フロンティアの工場などが担当するという。
同社では、スポーツウェアやインナーウェアなどのアパレル向け素材としてのビジネスがPIECLEXの第1弾としているが、今後、医療分野や美容分野など、電気を使って細胞に影響を与えたりといった先行研究がなされている分野を中心に、市場の開拓を進めていくとしており、こうした新規分野への取り組みも含め、2025年度に売上高100億円を目指すとしている。
なお、2020年度については、顧客へのサンプル販売がメインとなるが、早ければ年度末にも量産提供を開始したいとしている。