東芝は6月3日、自動車やドローンなどの安全性向上や自動走行・自律移動の実現に向けて、車載カメラと、動きを検知する慣性センサ(加速度センサ、角速度センサ)を用いて、自車両の動きを推定する「自車両の動き推定AI」と、周辺車両の将来の動きを予測する「他車両の動き予測AI」を開発したと発表した。

  • 車載公開データセットでの運動軌跡の比較

「自車両の動き推定AI」は、SLAM(車載カメラ画像から周囲環境の3次元空間地図の生成と車両位置の推定を同時に行う技術)をベースに、慣性センサを用いることで様々な風景に対応できる。 しかし、高速道路で車両の速度が一定でセンサの値に変化がない場合など、センサのノイズのほうが有効な信号より大きくなり、推定精度に悪影響を及ぼす問題があった。

そこで今回、同社は、車両の動きに応じて画像、各センサごとのデータの有用性を各時刻で判定し、変化がある有効なセンサだけを適宜組み合わせて車両の動きを推定する手法を開発した。自動車のように加減速が比較的少ない動き方から、ドローンのような加減速の大きい動き方まで対応することができる。同社調べのデータセットを用いて検証したところ、カメラと慣性センサから得られるデータをもとに推定する従来手法に比べて誤差を40%低減し、カメラのみを用いた場合との比較では誤差を82%低減した。同社によると、同AIは世界最高精度だという。

  • 他車両の将来位置予測結果(4秒先の位置を予測)

「他車両の動き予測AI」は、道路形状などを一般化した幾何学的な特徴をディープラーニングで学習することで、実際の道路の形状に依存しないAIが実現でき、さまざまな交通シーンが想定される一般道等においても膨大な数の予測AIモデルの作成が不要となる。車線ごとの動きの予測と、将来走行する可能性の高い車線を予測のする2段階構成となっており、多様な道路形状に対応した予測を実現する。データセットを用いた実験では、他車両の将来位置予測(4秒先の位置の予測)において、従来手法と比較して誤差を40%以上削減したという。

同社は今後、今回開発した技術を公道など実際の環境で評価を行い、2023年度の実用化を目指す。