新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がブラジルなど南半球で猛威を振るい始めている。米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、日本時間の6月1日に世界の感染者は610万人を超え、死者も37万人に達した。日本を含めた東アジアでは感染者増が抑え込まれ、欧州でも増加のペースが鈍化する一方、ブラジルを筆頭に南米での拡大が顕著で、アフリカでの増加も確実視されている。

  • alt

    世界の感染者数を示すグラフ。3月以降直線的に伸びたままであることが分かる(提供・米ジョンズ・ホプキンズ大学)

同大学の集計を見ると、世界の感染者数は5月26日に550万人を超えてから、わずか4日後の同月30日には約50万人増え、600万人を超えた。6月1日現在約617万人になり、これまでの最も早い増加ペースとなった。国別の感染者数では、米国が依然世界最多で約179万人。米国に続くのがブラジルで約51万人。最近は1日に1万~3万人のペースで増え、死者は3万人に迫っている。海外メディアはブラジルの貧困層が住む地域で感染者が増えており、検査・医療体制が不十分な中で、実際の感染者や死者はこの数字よりはるかに多い可能性があると報じている。

世界保健機関(WHO)の5月30日の公表資料によると、WHO米州地域事務局管内である北米、南米の感染者割合は46パーセント。トルコや旧ソ連諸国を含む欧州地域事務局管内が36パーセントでこの両地域で80パーセントを超えている。

これまでは中国、米国、ロシア、英国、スペインなど主に北半球で感染者が拡大してきた。しかし最近はブラジルなど南米のほか、アフリカ諸国での感染者、死者も目立って増え始めた。アフリカ全体の感染者数は統計上の数字では約10万人だが、ここでも検査体制は整っていない。WHOは実際の感染者は上がってくる数よりはるかに多く、新型コロナウイルスは南米のほか、アフリカでも既に南半球で猛威を振るい始めているとみている。

  • alt

    世界の感染状況を示す「世界感染マップ」(米ジョンズ・ホプキンズ大学提供)

今後南半球での感染拡大を抑えないと、来年にかけて世界のCOVID-19の感染者が年内に1千万人に迫る可能性があると指摘する感染症の専門家もいる。効果と安全性が確認されたワクチンや治療薬がまだできていない中で人々の不安は解消されていない。

WHOの担当者はこれまで、アフリカ諸国の多くは医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で重症患者を治療する体制が整備されていないことから、何らかの国際的な支援をしないと今後終息までに数千万人規模で感染者が増える可能性があると指摘している。

新型コロナウイルス以外のウイルスや細菌による感染症の各種統計資料を見ると、結核は2018年に約1千万人が発症し、約150万人が死亡している。エイズは同年だけで約170万人が新たに感染し、累計の感染者数は約3800万人で約77万人が死亡したとされている。また季節性のインフルエンザでは世界全体で毎年約25万~50万人、日本でも約1万人が死亡していると推計されている。

  • alt

    米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)

関連記事

「『学校閉鎖は流行阻止効果に乏しい』『2歳未満のマスクは危険』と小児科学会」

「新型コロナ抗体、東京都の陽性率は0.6% 1万人規模の抗体検査を実施へ」