IDC Japanは6月1日、国内AIシステム市場予測を発表した。これによると、2019年の国内AI(Artificial Intelligence:人工知能)システム市場は、市場規模(エンドユーザー支出額ベース)が818億4400万円、前年比成長率は56.0%となった。

2019年は多くの企業でAIに関する複数の利用を目的(ユースケース)とした実証実験(POC:Proof of Concept)や実利用へのプロジェクトが数多く実施され、POC前にユーザー企業がAIの活用と自社ビジネスの関連性をアセスメントし、AIによるさまざまな効果測定の指標を設定したことや、これらの指標を用いてプロジェクトに経営層を巻き込むなどの取り組みが、功を奏する事例が増えているという。

これにより、同市場の57.0%を占めるサービス市場が前年比で59.5%増加したことがAIシステム市場成長の主な要因となっている。さらに、ソフトウェア市場はAI機能が組み込まれているAIアプリケーションの需要の増加により、同52.4%増となったことも要因の1つとなっていることに加え、ハードウェア市場がAIの学習や推論の実行に不可欠な高性能コンピューターの需要の高まりによって、同51.1%増と好調に推移した。

2020年の国内AIシステム市場は、前年比43.2%増の1172億1200万円と予測しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるIT支出の抑制により、AIプロジェクトが停滞し、サービス市場とソフトウェア市場の成長スピードが減速すると指摘。

2021年は2020年の反動や経済の回復から前年比45.7%増と勢いが戻り、このことで2019年~2024年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は33.4%で推移し、2024年には3458億8600万円を予測している。今後、企業がさらにAIを活用し、企業内外におけるビジネスと付随するプロセス変革、および業務の自動化が進むことにより、AIシステム市場は高い成長を続けていくと推測している。

  • 国内AIシステム市場 支出額予測:2019年~2024年

    国内AIシステム市場 支出額予測:2019年~2024年

AIのユースケースが拡大することで、システムの展開領域がコア、クラウド、エッジまで連続的に拡張し、そのことはユーザー企業のIT環境の複雑さを増す要因になっていると同時に、AIの技術革新スピードが加速し、AIの開発自体の効率化や発展に貢献する一方で、技術の陳腐化も以前より早くなっているという。このような背景を踏まえた上で、ユーザー企業はAIの人材不足という長期的な問題に対しても多面的に対処する必要がある。

同社 ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの飯坂暢子氏は「ITサプライヤーは、ユーザー企業がAIシステムの継続的導入が可能になるよう、AIの最新技術と人的リソースをハイブリッドで提案することが求められる。また収益性のあるユースケースを特定し、迅速に製品/サービスを市場投入すべきである」と述べている。