家電の商品名としても使われており、誰もが一度は聞いたことがあるであろう「マイコン」。皆さんは、その仕組みや役割についてご存知でしょうか?

マイコンは、炊飯器や圧力鍋、電気ポットだけでなく、ありとあらゆる電化製品に組み込まれている電子部品です。今回は、そんなマイコンの言葉の意味やその仕組み、さらには、混同されることも多い「パソコンとの違い」について解説します。

マイコンとは?

  • 回路基板

マイコンとは、マイクロコントローラ(Microcontroller Unit、MCU)の略。ひとつのICチップにコンピュータが持つ基本機能一式を搭載した電子部品のことです。

実はこのマイコン、1970~80年代には、今でいう所の「パソコン」を指す言葉としても使われていました。これは、日本で最初に普及した個人用コンピュータが、NEC製の「TK-80」というマイコン基板だったことに由来しています。その後、個人用コンピュータが広く普及するにつれ、「パソコン」の呼び名が定着していきました。

現在では、マイコンというと、「単一の電子部品」を指す名称として使われることがほとんどです。むしろ、パソコンのことを「マイコン」と呼んでいる人がいたら戸惑ってしまいそうですね……。

マイコンとパソコンの違い

  • 調理家電

マイコンを理解する上では、先述した「パソコン」と比較して考えるのがわかりやすいでしょう。

まず、パソコンといえば、みなさんがご存知の通り、さまざまなプログラム、アプリケーションを実行する汎用機器ですね。一方のマイコンはというと、電化製品に組み込まれてあらかじめ格納されているプログラムを実行する、特定の用途専用の電子部品です。

パソコンではワープロソフトで文章を書いたり、表計算ソフトで統計処理をしたりと、使用するソフトにより、さまざまな用途に使用することができます。それに対し、マイコンは使用する目的が決まっており、そのために必要な最低限の部品のみで構成されたものとなります。

パソコンとマイコンは、どちらも「コンピュータ」という分類では同じなのですが、マイコンはあくまで“コンピュータを作るための部品”であり、パソコンは、“完成されたコンピュータ装置”というわけです。

マイコンの仕組み・役割

さて、次にマイコンの仕組み、および役割について紹介します。

マイコンは、ボタンを押すと光るような子供用のおもちゃや、キーボードやマウスといったパソコン周辺機器、工業用の工作機械といったさまざまな電子機器に組み込まれ、ハードウェア制御の役割を果たします。ちなみに、マイコンが組み込まれたこれらの機器は「組み込み機器」とも呼ばれます。

マイコンには、演算処理を行うCPU、プログラムを格納するためのROM、RAM、入出力装置といったコンピュータの基本構成のほか、用途に応じた専用部品も備えています。また、演算処理を行うためのRAMにはSRAMやDRAMといった揮発性メモリが使われています。

DRAMやSRAMについての説明は、スマホやPCに利用されている「DRAM」って何? SRAMとの違いは?をご覧ください。

例えば、炊飯器に使用されているマイコンは、温度センサを接続する入力端子と、ヒーターの温度を調節するための出力端子、および炊飯条件に応じて作られたヒーター制御プログラムが格納されたROM……といった部品から成っています。

マイコンを使う利点は?

最後に、マイコンを使う利点について紹介します。

まず、サイズ面について。マイコンを用いることで、制御回路の部品を少なくすることができるため、電子機器の小型化を実現します。

さらに、エンジニアの設計・開発効率向上の面でも利点があります。マイコンでは、ソフトウェアを書き換えることで、動作の仕様を変更することができます。マイコンが広く使われるようになる前には、動作を変更するたびに電子部品を組み直す必要があったため、設計、開発にかかる時間の短縮に寄与しました。

また、マイコンの部品代は、安いものでは100円以下で購入できるものもあり、単純に「安価に組み立てられる」というのも利点の1つです。

これらの利点が組み合わさったマイコンは、今では我々の生活になくてはならない電子部品となっています。

まとめ

以上、マイコンについて紹介しました。マイコンは、身の回りのほとんどの電化製品に組み込まれています。器用になんでもこなせる電子機器、というよりは、特定の使用目的において、不要なものを削ぎ落とすことで、小型、省エネ、低価格を実現した電子部品である、と憶えておくとよいでしょう。

マイコンはありとあらゆるデバイスに組み込まれているため、身の回りの電化製品を分解すると、すぐに発見できますよ。もちろん、わざわざ分解せずとも、インターネットには「〇〇(電化製品)を分解してみた」といった記事や動画が数多く存在していますから、興味がある方は、マイコンがどんな製品に使われているのか、調べてみても面白いかもしれませんね。