富士フイルムは5月19日、AI(人工知能)技術を用いた新型コロナウイルス肺炎の診断支援技術の開発を開始したと発表した。同社と京都大学(大学院医学系研究科呼吸器内科学 平井豊博教授)が共同開発した間質性肺炎の病変を定量化する技術を応用し、新型コロナウイルス肺炎患者の経過評価や治療効果の判定などをサポートする診断支援技術の開発を目指す。開発は、新型コロナウイルス肺炎の患者を受け入れている国内の医療機関との共同研究で推進し、まずは神奈川県立循環器呼吸器病センター(神奈川県横浜市)との共同研究をスターさせ、今後は共同研究先を複数の国内医療機関に拡大していく予定だ。
新型コロナウイルスの感染拡大は国内外で深刻な問題となっており、現在は医師が行っているさまざまな治療について、その治療が有効であったかどうかの判断基準は明確に示されておらず、新型コロナウイルス肺炎は間質性肺炎と同様の画像所見を示し、病変パターンが多岐にわたるとの専門家の意見があるという。
肺炎の進行や治療の効果を確認するためには、胸部CT画像から徐々に変化する病変の性状を目視で確認する必要があるが、1患者あたり数百枚にもなるCT画像の読影は専門医でも負担がかかっている。同社の間質性肺炎の定量化技術は、AI技術を用いて設計したソフトウェアがCT画像から肺野(はいや)内の気管支、血管、正常肺および、網状影やすりガラス影、蜂巣肺(ほうそうはい)など、肺の7種類の病変性状を識別し、自動で分類・測定することで、間質性肺炎の病変を定量化するものとなる。
さらに、肺野内における病変の分布と進行状態を詳細に確認できるよう、肺野を12の領域に分割し、その領域ごとに、病変の容積および割合を表示。同技術の開発にあたり、同社は2018年春から京都大学と共同研究を開始しており、同社が開発した間質性肺炎の病変を分類および定量化するAI技術を京都大学が保有する症例データに適用し、識別性能の評価と改善のフィードバックを繰り返し実施し改良することで、高精度な識別性能を実現するという。
今回、間質性肺炎の定量化技術を活用し、新型コロナウイルス肺炎患者の経過の評価、治療効果の判定を支援する技術開発をスタートしており、今後開発が期待されるさまざまな治療薬の効果判定にも利用できる技術を確立することで、新型コロナウイルス肺炎の治療薬の開発・評価の加速に貢献していく考えだ。