日本ヒューレット・パッカード(HPE)は5月14日、オンラインによる記者会見を開き、昨年11月に発表した「HPE Container Platform」を同日から提供開始したと発表した。同製品はKubernetesを使い、クラウドネイティブと非クラウドネイティブの両方のアプリケーションをサポートするよう設計されたエンタープライズグレードのコンテナプラットフォームであり、データセンター、パブリッククラウド、エッジにおいてベアメタルや仮想マシン(VM)上で実行されるという。
冒頭、日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏は新製品について「時代の変遷とともにIT環境も変遷しており、昨今注目されているのがコンテナ技術だ。クライアント/サーバ、仮想化、クラウド、コンテナと同時並行的に混在している環境を、いかにマネージするかが問われている。新製品はKubernetesに、われわれが買収したコンテナベースのAI/機械学習ソフトウェアプラットフォームのBlueData、Hadoopなどのデータファブリックを提供するMapRの技術を融合しており、AIや機械学習、ビッグデータの分析・活用に適している」と説明した。
同製品は、コンテナをベアメタル上で実行することでコストと複雑さを削減すると同時に、VMとクラウドにおいて展開可能な柔軟性を備えており、ハイブリッドクラウドとマルチクラウド上でKubernetesを展開できるという。BlueDataソフトウェアをコンテナ管理のための制御プレーンとして、MapRの分散型ファイルシステムを永続ストレージのための統一されたデータファブリックとして使用する、統合ターンキーソリューションとなる。
日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括プロダクトアーキテクト統括本部 製品技術本部 ストレージソリューション部 部長代理の野瀬哲哉氏は「新製品を活用すれば、データエンジニア、データサイエンティスト、アプリケーション開発者は事前登録済みのアプリケーションイメージから即座に、データ分析やデータパイプライン構築に必要となるアプリケーションを配備できる。また、インフラ管理者はKubernetesの複雑な導入・構築に悩むことなく、インフラ基盤の構築が可能だ」と話す。
主な特徴としては「データ処理特性に応じた柔軟な配備」「セキュリティに配慮したデータ分析基盤の統合」「強固なデータファブリック」の3点を挙げている。
データ処理特性に応じた柔軟な配備では、顧客のITインフラ要件に幅広く対応し、エッジ、コア、クラウド、仮想、物理、VMを問わず、インストールして利用可能なほか、処理特性に応じたホストやKubernetesバージョンの選択を可能とし、エッジ、コア、クラウドを制御プレーンで管理を予定している。
セキュリティに配慮したデータ分析基盤の統合については、企業向けシステムに求められるセキュリティ要件に対応し、マルチテナント機能を備え、部門・プロジェクトごとに独自のテナントを割り当てることで、リソースを論理的に分割して利用するだけでなく、AD(Active Directory)やLDAP(Lightweight Directory Access Protocol)などの認証基盤と連携することでセキュアな統合分析基盤の構築を可能としている。
強固なデータファブリックに関しては、データ分析に必須の分散データ処理/ステートフルアプリも容易に配備できる。これは、BlueDataのIO高速化機能とMapRのデータファブリック機能を組み合わせることで、実現している。また、リモートストレージ接続機能により、既存のHDFS/NFSのデータストアを移行することなく、利用できるという。
加えて、機械学習の学習モデルの開発環境の整備からトレーニング、デプロイ、モニタリングをはじめとしたオペレーションを支援する「HPE ML Ops」を提供する。
続いて、国内における販売方針・展開について、日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 製品統括本部 製品部 カテゴリーマネージャーの加藤茂樹氏が説明した。
同氏は新製品のターゲットについて「データ分析基盤を導入済み・検討中の企業が主なメインターゲットになる。具体的には、既存Hadoopからの置き換え/統合や複数クラウドからの移植/統合、全社共通データ基盤として採用を検討している企業などだ」と話す。
また、新製品はオンプレミス、パブリッククラウド、エッジどこでも稼働できる強みを持っているため、同社のハードウェア上で稼働させたリファレンスアーキテクチャに加え、用途別に最適化した「HPE Apollo」(AI、機械学習、深層学習、とデータ分析に特化)、「HPE Synergy」(DevOps、CI/CD、アプリケーション最適化、ハイブリッドクラウドに特化)、「HPE Edgeline」(エッジ分析とIoTに特化)の3つのプラットフォームも用意。
ライセンス体系は物理CPUコア単位課金となり、「HPE Container Platform」「HPE ML Ops」を揃え、HPE Container Platformはハードウェア別のラセインスとしてApollo/Synergy/Edgelineの「HPE Select」と、HPE Select以外のハードウェア、クラウドで利用する「Universal」の2種類に分かれている。
さらに、コンテナ化に関連した専門家からのアドバイス、展開、トレーニング、サポートサービスを提供し、新製品のための新しい設計、実装や運用サービスを通じ、本番稼働への移行時間を短縮することができるという。加えて、Kubernetesのトレーニングプログラムを提供し、Linux Foundationと提携することで、認定試験にも対応した最新のKubernetes技術をハンズオンを交えて3日間で学ぶことを可能としており、教室型研修とライブオンライン研修の2つの形態で提供する。トレーニングは8月に開始を予定し、価格は税別で36万円となる。