東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2020年4月のIT・ソフトウエア業界のM&Aの発表件数は9件で、4月としては2008年以降の13年間で、2009年(13件)、2016年(12件)、2015年(11件)、2008年(10件)、2017年(10件)に次ぐ6番目(2012年、2019年と同数)となった。
取引金額は約11億円で、4月としては2008年以降の13年間では9番目にとどまった。10億円を超える案件がなく、1億円以上の案件も1件のみで他の案件は1億円未満と、金額非公表が4件ずつだったため金額が膨らまなかった。新型コロナウイルスの感染拡大も、企業の買収意欲を抑制させている可能性がある。
取引金額トップはSHIFTの約9億円
4月のM&Aで取引金額が最も多かったのは、SHIFTがパソコンのリユース事業(パソコン買い取り、パソコンデータ消去、中古パソコン販売・レンタル)などを手がけるエスエヌシー(大阪市)の全株式を取得し子会社化すると発表した案件で、取引金額は約9億円。
ソフトウエア製品のリリースサイクルに対応した各種サービスや、製品リリース後の顧客サポートなど、上流工程から下流工程までの包括的な品質保証サービス構築の一環として、子会社化に踏み切った。
2番目はYE DIGITALが工場自動化に関する事業を安川電機に譲渡すると発表した案件で、譲渡価格は9,000万円。
対象事業を会社分割により新設するアイキューブデジタル(北九州市)に承継させたうえで、新会社の株式60%を安川電機に譲渡する。
工場内で使われるサーボモーターやロボットなどの自動化製品で高いシェアを持つ安川電機との共同運営を通じて、製造業向けIoT(モノのインターネット)製品の売上拡大を目指す。
3番目はアイスタディが、ネクスグループ傘下でソフト開発のイーフロンティア(東京都港区)の株式の99.9%を取得すると発表した案件で、取得金額は8,100万円。
イーフロンティアが強みとする3D(三次元)グラフィック技術を獲得し、LMS(学習管理システム)や学習コンテンツ事業と組み合わせ、次世代の在宅ワーク、在宅学習をにらんだラーニングサービスの開発を促進する。
アイスタディは傘下企業を通じて、介護事業者向けICT(情報通信技術)の導入支援を手がけるケア・ダイナミクス(東京都港区)の全株式を取得し、子会社化することも発表した。介護事業領域に進出する足がかりとするのが狙いで、取引金額は7,300万円。
このほかにアンドールが、クボタ全額出資のシステム開発会社であるクボタシステムズ(大阪市)が手がける製造業向けパッケージソフトの製品開発・販売事業を譲り受けると発表した案件があった。取得価格は無償。