中国勢初のトップ10入りを果たしたHiSilicon
半導体市場動向調査会社である米IC Insightsは、2020年第1四半期の半導体売上高ランキングトップ10を発表した。
同四半期のトップ10社の売上高総額は、前年同期比16%増となっており、半導体業界全体の同7%増と比べると2倍以上高い成長率であることが注目点で、大企業による市場の寡占化が進んでいることがうかがえる。
トップ10社の本社所在国別内訳は、米国が6社、韓国が2社、台湾および中国が各1社となっており、中国企業が半導体産業の歴史において初めてトップ10入りを果たしたマイルストーン的な四半期となったと言える。
トップ10入りを果たした中国企業はHuaweiの子会社であるHiSiliconで、いわゆるファブレス(IC設計会社)である。トップ10を事業形態別でみるとIDMが5社(Intel、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technology、Texas Instruments)、ファブレスが4社(Broadcom、Qualcomm、NVIDIA、HiSilicon)、ファウンドリがTSMCとなっている。
IC Insightsのランキングは、他社のランキングとは異なり、ファウンドリも含んでいる。これにより、業界総売上高は水増しされてしまうが、ファウンドリの規模の大きさを同社の主要情報提供先である装置材料メーカーが販売戦略策定のために知りたがっているためだという。
圏外に消えたキオクシアとInfineon
2020年第1四半期の順位だが、2019年第1四半期と比べると1位から8位までは変化がなかった。しかし、9位にはNVIDIA(前年同期11位)が、10位はHisilicon(同15位)がそれぞれ入ってきた。この結果、前年同期9位のキオクシア(2019年第1四半期時は東芝/東芝メモリ)、同10位のInfineon Technologiesがトップ10圏外に去ることとなった。
躍進を遂げたHiSiliconだが、2020年第1四半期は前年同期比54%増という高い成長率を達成した。その売り上げの約9割が親会社Huawei向けとされており、いかにHuaweiが好調であったか、ということがうかがえる。
また、ファウンドリであるTSMCも同45%増と大きく伸ばしたが、この増加分の大半がAppleとHiSiliconのスマートフォン(スマホ)向け7nmプロセス採用アプリケーションプロセッサの販売によるものだという。HiSiliconのTSMCの売り上げに占める割合は年々増加しており、2017年は5%ほどであったものが、2019年には14%まで伸ばしている。Appleと合わせるとTSMCの2019年の売上高の37%を占める規模だという。
なお、中国ではHiSiliconに次ぐ規模のファブレスである清華紫光集団傘下のUNISOCが、HiSilicon同様、スマホ用アプリケーションプロセッサを中国のスマホベンダー向けに売り込むことで、売り上げを急増させており、先行してシェアを獲得してきたMediaTekやQualcommの脅威になりつつあるという。同じ紫光集団傘下のYMTCも3D NANDの量産準備を進めており、韓国勢が危機感を抱くようになっているとの話もあり、長期的に見れば、中国勢が半導体企業の売上高ランキングトップ10にさらに食い込んでくる可能性が高いと見る業界関係者も少なくない。