Samsungの2020年第1四半期業績は前年同期比で増収増益

Samsung Electronicsは4月29日、2020年第1四半期(1~3月期)の決算概要を発表した。それによると、全体の売上高は前年同期比5.6%増、前四半期比7.6%減の55兆3300億ウォンとなり、営業利益は、前年同期比3.43%増の6兆4500億ウォン。純利益は同3.2%減の4兆8800億ウォンとなった。

主にサーバおよびモバイル向け半導体需要が増加したほか、モバイル事業での製品構成の改善や有機ELディスプレイの顧客多様化などが寄与した一方で、ディスプレイ事業および家庭用電化製品事業の季節性の低迷と新型コロナウイルスの影響がマイナス要因となったという。

また、同四半期の設備投資額は合計7兆3000億ウォンで、うち6兆ウォンが半導体向け、8000億ウォンがディスプレイ向けに投じられたという。

半導体事業のけん引役は堅調はメモリビジネス

半導体事業のみの業績を見ると、売上高は前年同期比22%増、前四半期比5%増の17兆6400億ウォン、営業利益も前年同期比3%減、前四半期比16%増の3兆9900億ウォンだった。

メモリ事業は、サーバやパソコンを中心に需要が増加したほか、5Gインフラへの継続な投資により季節的閑散期かつ新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という影響があったにも関わらず、堅調な需要であったという。特にDRAMについては、ストリーミングサービスやオンラインショッピングの利用が増大したことから、データセンターからの需要が引き続き堅調であったとする。

一方のNANDについては、128GBを超える高密度ストレージを採用している主要顧客からの需要拡大、特にデータセンター向けのサーバSSDは、ネットワークの活用が進む中で、需要が高まり続けたとする。

このほか、システムLSIビジネスも利益が増加したものの、ファウンドリ事業は中国からの高性能コンピューティング(HPC)需要の減少により利益が減少したという。

2020年第2四半期もメモリ事業は堅調の見込み

同社は2020年第2四半期の半導体市場動向について、DRAMについては、すべてのアプリケーションで堅調に推移するとの見通しを示している。主にリモートワーク、オンライン教育、ストリーミングサービスなどの需要急増に伴うサーバ需要の増加によるものである。ただし、モバイル機器の需要は不確実で、同社では増加するサーバ需要に重点を置いて、製品構成を柔軟に管理し、プロセス移行を進めることで、コスト競争力を高めていくとしている。

一方のNANDについてはスマホ需要の減少による影響がデータセンターからのSSD需要を相殺するため、市場の成長率はほぼ横ばいになると見ている。そのため同社では、第5世代V-NANDへの移行を継続して進めながら、2TBを超す高密度サーバSSDの需要拡大に注力するとしている。

2020年第3四半期以降もメモリ市場の成長に期待

2020年第3四半期以降のメモリ市況について同社は、新型コロナウイルスの動向がモバイル機器の需要に対する大きな不確実性の1つとしているが、その一方でサーバとPCの需要増により、高速かつ高信頼性のクラウドサービスの提供が求められることとなり、市場全体として見た場合はプラスに働くとの見方をしめす。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が長引けば、全体的な需要の減少をもたらす可能性もあるとしている。

とはいえ、このクラウドベースのサービスの高まりは、中長期的に見て、今後、さらに加速度的に進んでいくと予測している。そのため、ハイエンドな高性能メモリに対する需要は継続的に高まっていくとみられることから、同社では市場の変化に対応する柔軟な製品構成と投資の実行により、1Z-nm DRAMならびに第6世代V-NANDへの移行を加速させていくとしている。

5G頼みのシステムLSI事業

2020年第1四半期のシステムLSI事業は、5G向けプロセッサや高解像度イメージセンサの需要の高まりがあり好調であったが、第2四半期に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大による消費者心理の低迷により、こうしたシステムLSIの需要が低迷すると同社では予測しており、同社では高解像度イメージセンサの供給を最優先に、5G SoC市場での存在感を高めることで、こうしたマイナス影響を最小限に抑えることを目指すとしている。

また、2020年第3四半期以降については、各社から5Gスマホが発売されることから、5G SoCの需要が高まり、併せて高性能イメージセンサの需要も高まることが見込まれることから、新型コロナウイルスによる不確実性に対応するべく、市場を注視し、柔軟な対応を進めるとともに、競争力の高い新製品の投入による事業拡大を目指すとしている。

TSMCの猛攻で影が薄いファウンドリ事業は立て直せるか?

2020年第1四半期のファウンドリ事業の業績は、中国顧客からのHPCチップ需要の減少によって、減収となった。第2四半期においても、新型コロナウイルスの感染拡大が引き起こした不確実な市況を注視しながら、EUVを活用した5nm製品の量産を開始するとしており、EUVプロセス活用のリーダーを目指すとしている。しかし、ファウンドリ最大手のTSMCはEUVを活用した量産で先行しており、それにどのように対抗していくのかは不透明なままである。

なお、2020年第3四半期以降については、市況の不確実性に対処するために、アプリケーションの多様化に焦点を当て、モバイルに加え、コンシューマアプリケーションやコンピューティングアプリケーションなどの領域での市場機械拡大を目指すとしている。また、将来に向けた微細プロセスへの投資も継続していくとしており、2020年は5nm製品の量産開始に加え、GAAを用いた3nmプロセスの開発にも注力するというが、TSMCも3nmプロセスの開発を進めており、どちらが先端プロセスの提供でリードするのか注視する必要があるだろう。