ソニーは4月23日、複数の交通機関を統合した次世代移動サービスであるMaaS(Mobility as a Service)向けにブロックチェーン技術を活用した共通データベース基盤(ブロックチェーン・コモン・データベース:BCDB)を開発したと発表した。同社が独自開発したBCDBはデータの高速処理を特徴としており、1日700万件以上の利用者が匿名化された移動履歴と収益配分の記録・共有を可能としている。
同社は、オランダ・インフラ水管理省が2019年に公募したMaaSのプログラム(ブロックチェーン・チャンレンジ・プログラム)に参画し、2020年3月末までBCDBによる実証試験を行った。
参加者の中で同省の要求仕様に対応できたものは同社のBCDBのみであったほか、ブロックチェーン技術をMaaS向けに活用し、大規模な移動履歴と収益配分の記録・共有を実現した実証試験は業界初の取り組みだという。
ブロックチェーン技術は、プログラムや情報の破壊、改ざんが困難なネットワークを作り、データや権利情報を複数の事業体が共同で共有し、管理する目的に適していることから、BCDBによりMaaSに関わるさまざまな交通事業者間でブロックチェーンの分散台帳に情報を記録・共有することで、信頼性と透明性を持った情報の活用とサービスへの展開を可能とした。
欧州では、オランダ・インフラ水管理省を含めさまざまな事業体が、複数の交通事業者が関わるMaaSの推進に向けて、交通に関するデータのオープン化や非中央集権型のデータマネジメントなどの施策を展開している。
BCDBは非中央集権型の情報基盤として、移動記録や収益分配に加えて、移動記録の分析や活用により、移動効率化への貢献や将来のスマートシティ構想に向けた施策検討に寄与するものと考えられるという。
ブロックチェーン・チャンレンジ・プログラムで実証試験を行ったBCDBには拡張性があり、さらなるデータの高速処理化も見据えていることから、大都市の交通事業者による活用も可能となっていることに加え、BCDBはMaaS向けに限らず、スマートシティ構想における各種センサデータの記録・共有などへの応用も期待できるとしている。