新型コロナで消えた大型DDI供給不足懸念
2020年の初頭、半導体ファウンドリは利幅の大きな5G、AI、車載向けデバイスなどの製造を優先しがちなため、利幅が小さい大型ディスプレイドライバIC(DDI)の生産に消極的で、供給不足が2020年のディスプレイ業界の課題になると予測されていた。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、事態が一変したという調査結果を半導体市場動向調査会社の台TrendForceが発表した。
それによると中国での新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中国のディスプレイ工場の稼働率が低下。その結果、2020年第1四半期のディスプレイパネルメーカーの出荷数量は前年同期比12%減の642.5億枚にとどまったという。また、欧米での新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、2020年第2四半期の主要なテレビブランドによるテレビ向けパネルの購入数量も減少しているという。
各国当局の要請による在宅勤務の増加でPC向けディスプレイパネルの需要は増加しているが、この特需が終わった後のPC向けパネル全体の需要はまだ不透明であるため、4月13日時点で2020年は大型DDIの供給がタイトになるという従前の予測が表面化していないという。
ファウンドリ各社は高付加価値品を重要視
一般的に大型DDIとディスプレイパネルを接続するインタフェースにはmini LVDSと高速P2Pがあるが、普及率はmini LVDSが36%、高速P2Pが64%だという。TrendForceでは、ノートPC、PCモニター、テレビパネルといった主要アプリケーション向けmini LVDSインタフェース搭載DDIの年間需要は約15億個、毎月のウェハ需要は5~6万枚(200mmウェハ)と予測している。
DDIの製造を行ってきたファウンドリにはUMC、TSMC 、VIS(Vanguard International Semiconductor)などがあるが、現在、利益率が高いP2Pインタフェース搭載DDIの注文を優先しており、今後もその流れを続ける予定であり、すでにファブレスICベンダなどにはmini LVDS搭載DDIの製造はほかのファウンドリに委託するように伝えているという。mini LVDS搭載DDIの製造能力を増やす可能性が高いファウンドリとしてはPSMCならびにNexchipなどがあるが、彼らはそうした需要を満たすだけの生産能力を現状では有していないという。
ディスプレイドライバICの供給は今後どうなる?
ファウンドリの200mmウェハの需要はパワーマネジメントIC(PMIC)、ミッドレンジCMOSイメージセンサといった分野で強い需要がもとよりあったが、ここにきて温度計などを含む医療機器向けマイコンの需要も増加しており、主要ファウンドリ各社の200mmウェハラインはほぼフル稼働の状況となっているという。もし、新型コロナウイルスの感染拡大を効果的に抑えることができれば、これら新型コロナウイルス感染症関連の半導体需要は減少することとなり、代わってDDIの需要が増加、その結果として大型DDIの供給が再びタイトになる可能性があるとTrendForceでは予想している。
同社によるDDIの生産を手掛けるファウンドリのウェハ投入数量調査によると、2019年は200mmウェハで月平均25~27万枚、300mmウェハで月平均12~15万枚で、これらを200mmウェハに換算しなおすと月平均は合計で55~60万枚に及んだという。国別に生産能力を見ると、台湾が50%以上を占め、2位が34%の韓国、中国が10%、日本が3%、その他の地域が1%となっている。
なお、企業別にみると、UMCがトップサプライヤで、2位にSamsung Foundry、3位にSK Hynixとなっており、UMCは主に中華圏のファブレスからの注文でシェアを獲得してきた。もし、仮にUMCがもっと利益の出せる製品に製造をシフトさせた場合であっても、韓国のファウンドリは韓国のサプライチェーンが比較的閉鎖的であるため韓国外からの注文数は減ってきていることから、UMCほどDDI市場全体の需要と供給に影響をあたえることはないとTrendForceでは見ている。