横浜市立大学(横浜市大)大学院医学研究科の梁明秀教授を中心とした共同研究グループは4月20日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発に成功したことを発表した。

国内の新型コロナウイルスに対する病原体検査はPCR法などのウイルス遺伝子検出法のみが適用されているが、一般的には診断までに平均約4~6時間を必要とし、作業工程も複雑なため、検査数が限定されているのが現状となっている。一方、イムノクロマトキットを用いた抗体検査など、感染早期に実施可能な簡易診断法の活用が期待されているが、性能の問題などがあり、活用のためには新型コロナウイルス抗原を正確に認識できるモノクローナル抗体を開発するなどの課題があった。

今回、研究グループは、新型コロナウイルスを構成するヌクレオカプシドタンパク質(NP)を、梁教授の保有技術であるコムギ胚芽無細胞法を応用した病原体タンパク質合成法で大量に調製し、これを免疫原としてマウスに接種することで、NPに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを144株樹立することに成功したという。さらに、そこから新型コロナウイルス抗原のみを特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした結果、そのうちの20株が新型コロナウイルスのみを検出するモノクローナル抗体を産生していることが判明したという。

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    新型コロナウイルスの構造と、今回研究グループが開発した抗体の標的のイメージ (出所:横浜市大)

これらの抗体が認識する部位については、すでに明らかになっているほか、各国で分離されている新型コロナウイルス株間においても保存されていることを確認済みだという。また、同抗体は、ほかのヒトコロナウイルスとはまったく反応せず、新型コロナウイルスとのみ反応することも確認したほか、これらの抗体のうち6株は、免疫染色やELISA法などにも使用できるだけの高い品質の抗体であることが判明したという。

研究グループでは、今回開発した抗体を用いることで、新型コロナウイルスのみを簡単かつ迅速に検出できるイムノクロマトキットの開発につながることが期待できるとしている。そのため今後は、実際にイムノクロマトキットの開発を進めていくとしており、臨床検査試薬の製造・販売を行う企業との連携を模索していくとするほか、開発に関心を持つ企業などからの問い合わせも受け付けていくとしている。