不安が高まると陥りやすい思考のひとつにゼロサム思考がある。起業家向けビジネスサイトのEntrepreneurでは、「The Zero-Sum Mindset: How to Avoid Toxic Thinking in Moments of Crisis」として、非常時に陥りやすいゼロサム思考を回避する方法について説明している。

ゼロサム思考とは、全員の利得の和がゼロになるゼロサムゲームに由来する。得をする人がいるためには、損をする人が必ずいなければならないという考え方だ。Wikipediaではそれを当てはめた例として、「社会集団間の競争において、1つの集団がより多くの資源を得ることは、それ以外の集団がより少ない資源を得るという考え」を挙げている。

記事を寄せる米Syracuse University(シラキュース大学)准教授のJoel B. Carnevaleさんは、先史時代の人類の環境ではリソースが限られ、競争が激しかったことから、他人に対して勝つか負けるかという心理が働いていたことや、トイレットペーパーに代表されるようにリソースに限りがある、枯渇すると危機感を感じた時に、先史時代のような考え方が生まれてくると指摘している。

問題は、このような非常時には、勝ち負けではない状況でもゼロサム思考で物事を見てしまいがちになること。実際、経営学会のAcademy of Managementの論文によると、景況感が苦しくなると社員は成功をゼロサムで考えるようになり、他の社員への協調を行わなくなるという。ゼロサム思考に陥りやすい環境にあることは間違いない。では、それを回避するにはどうすれば良いか?記事のアドバイスは2つだ。

1."得"とは何かを再考する

先行きが見えないと、これまで以上に短期的視点になり、短期的な得に関心がいってしまう。そうなると、同僚を助けようとは思わないだろうし、売り場に残り少なくなったトイレットペーパーを"我先に"ととってしまうだろう。

だが、危機の時こそ助け合いが重要。他者をトイレットペーパーを取り合う敵として見るのではなく、他者を助ける姿勢を保つことで相互にメリットがあるという気持ちが生まれるという。

そこでの激闘が取り返しのつかないトラブルに発展する可能性もあるだろう。そのリスクを織り込んでトイレットペーパーを確保することが「得」なのかどうか。

2.ゼロサムではないやりとりにフォーカスする

誤情報が元になったトイレットペーパー不足問題、政府などが誤情報だといっても"なくなるかもしれない"という不安が人々を買いだめに向かわせる。他人に取られる、自分の分がなくなるというのはゼロサム思考だが、この考え方は他人への不信感を高め、略奪につながりかねない。

記事では、周囲との余剰の交換の可能性や協力により得られる機会の模索などゼロサムではない方法。ゼロサムではないプラス相互作用の機会が必ずあることを留意しつづけることを勧めている。本当に代替手法が無いのか?これを考えてみることも重要なのかもしれない。