世界中で高まる医療向け半導体のニーズ
新型コロナウイルス感染患者の監視や治療に使用される電子機器には、かなりの供給ギャップがある。これらの医療機器には多数の半導体が使用されるため、医療機器メーカーや搭載する半導体メーカー各社に、医療機器向け半導体の製造を緊急委託し、生産を増やそうとしている。
そのような状況下で、ファウンドリ大手の台UMCは、台ファブレスベンダの台Phison Electronicsから医療用人工呼吸器で使用される半導体の緊急注文に対してスーパーホットラン(SHR)を採用することで通常は2か月ほどかかるリードタイムを1か月強に短縮していると市場動向調査会TrendForceが4月10日付で伝えている。
不足する医療機器向け半導体
医療用人工呼吸器は、内蔵されたさまざまな半導体コンポーネントの働きで、患者の呼吸をサポートする気流を継続的かつ正確に調整できる。
電子機器サプライチェーンにおいて、半導体は他のほとんどのタイプのコンポーネントと比較して、リードタイムが長くなる傾向がある。つまり、人工呼吸器を組み立てるために、半導体(チップ)以外のコンポーネントはそろっているが、チップがないため組み立てられない、ということが起こってしまう。
また、従来、医療機器メーカーからの半導体需要は、他のスマートフォンやPCなどといった大口の半導体アプリケーションと比べて比較的小規模であるため、そうしたチップを提供する企業は、当該製品の在庫をそれほど多く持たず、かつ在庫レベルに大きな変更を加えることはめったになかった。
つまり、供給側は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う医療用人工呼吸器の注文の殺到に備えていなかったといえる。
優先度を引き上げることで製造時間を短縮
ファウンドリは、製造ラインの効率を最大化するために、ウェハディスパッチの順序付けの優先順位をおこない、「スーパーホットラン(SHR:超特急)」、「ホットラン(HR;特急)」、および「ラン(NR:通常)」の3種類にふり分けて製造を行っている。SHRは最短のサイクルタイムで製造するための最高の優先度である。HRは、SHRに比べてサイクルタイムが長く、2番目に優先される。NRは、ウェハ処理の標準モードであり、ほとんどの注文に適用されている。SHR/HRは、重要なサンプルの結果や新しいプロセスノードの開発に関するリクエストをすばやく検証したいクライアントの特別な事情で使用される。大量生産段階でのSHR/HR採用の頻度は低いという。
「Phisonの注文の優先順位を引き上げることにより、UMCはクライアントの緊急かつ切実なニーズに対処することに積極的で、かつ医療機器に使用される半導体コンポーネントの製造におけるファウンドリの重要な役割を際立たせることとなっている」とTrendForceは述べている。また、「UMCが受け取った緊急注文は、8インチウェハベースでの生産だが、UMCでの8インチウェハの処理能力は逼迫している。にもかかわらず、Phisonの依頼を受け、それにSHRを適用したことは、新型コロナウイルスに対する世界的な戦いへの半導体業界としての貢献と見なすことができるだろう」ともしている。