Box Japanは4月16日、オンラインで「リモートワークを現実化するBoxの施策と仕組みについて」をテーマに記者説明会を開催した。
リモートワークを実現するためには
冒頭、Box Japan 執行役員 マーケティング部 部長の三原茂氏は4月10日に発表された東京商工リサーチの第3回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査の結果を引き合いに、1万7340社における在宅勤務の実施率は実施した企業が25.4%の4402社、実施していない企業が74.6%の1万2938社となり、大手企業では実施した企業が48.1%に対し、中堅中小企業では20.9%にとどまったという。
このような状況下において、ビデオ会議サービス「Zoom」の爆発的な利用拡大、VPNやシンクライアントの容量不足、持ち出しPCの買い足し・配布があったものの、紙(捺印込)がオフィスにあるため仕方なく出社したり、セキュリティへの懸念が発生したりしている。
同社の統計によると、コラボレーター(共有)が2月と3月の最終週比で37%増、2月~3月にかけてZoomとの共同利用が585%増、そのほかツールとの共同利用が22%増となった。
三原氏は「今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、従来から言われている働き方を変える上での3大要素である制度、文化、ITのうち、制度と文化は整った。しかし、一番進んでいたはずだったITが残ってしまっており、情報へのアクセスとセキュリティを解決する必要がある」と指摘する。
同氏は、オフィスワーカーのリモートワークには、(1)ファイル、フォルダなどのコンテンツにアクセスできる仕組みとセキュリティ、(2)それらを社内外の関係者と共有コラボレーションする仕組み、(3)それらで社内外の関係者とコミュニケーションするツール、の3点を整えることで対応が可能になるとの認識を示す。
そこで、これら3つのポイントを踏まえた上でリモートワークを実現するのがBoxというわけだ。一方で、中堅中小企業においてはリモートワークの実施率自体が低いため、同社では4月15日にBoxを活用したリモートワークの実現に関するオンライン相談会の開始を発表し、同20日から実施を予定している。
場所に依存しない環境の構築
現在、企業におけるリモートワークの現状としては、SlackやSkype for Business、Zoomなどビジネスチャットやビデオ会議システムを活用しているが、自宅や仮想デスクトップからはVPN経由でアクセスしており、モバイルは未対応となっている。
自宅や仮想デスクトップからアクセスしても、アクセスが集中し、ボトルネックになることに加え、接続が安定せずに切断される場合やキャパシティはピークに合わせる必要もあるほか、持ち出しPCの不足やVDIライセンスの枯渇などの課題が挙げられる。これは、社内のファイルサーバへのアクセスは、一般的にはイントラネットからのアクセスが前提の設計のため、社外からのコンテンツへのアクセスは例外的な扱いだからだと指摘する。
そのような状況を鑑みて、Box Japan シニアコミュニティマーケティングマネージャーの辻村孝嗣氏は「リモートワークをする際に、コミュニケーションの中心にあるものはコンテンツだ。そのため、コミュニケーションツールだけでなく、コンテンツそのものをクラウドに移行し、柔軟性の高いリモートワーク環境を構築すべきだと考えている。そうすることで、自宅、モバイル、オフィスからでも同様にアクセスできる」と話す。
情報へのアクセスを具体的に進めるためにBoxの場合は、セキュリティレベルに応じたコンテンツセキュリティを提供しており、例えば公開資料などは柔軟なファイル共有機能を、社外秘の資料には強固なセキュリティ機能をそれぞれ提供することができる。
これまでの境界型セキュリティは強固な境界でセキュリティで自社のコンテンツを守っていたが、Boxでは社内外問わず、Boxテナントへのアクセス、フォルダへのアクセス件、外部共有のコントロールなど、多重の境界で守るコンテンツセキュリティを実現している。
また、フォルダには編集、削除可能、閲覧のみ、ダウンロード不可、アップロードのみなど7段階のアクセス権や、共有のURLリンクは同じ会社のユーザーのみ、招待されたユーザーのみ、社外を含むすべてのユーザーと3種のアクセス許可範囲に加え、有効期限、パスワード、ダウンロード制限をはじめ、ユーザーのアクセス権限の設定ができる。
さらに、外部共有禁止のフォルダ設定も可能とし、一番上位で設定した制限が配下のファルダに適用できるほか、アクセスしているユーザーのメールアドレス、アクセス時刻を透かしで表示することで機密情報を視覚的に明示し、ダウンロード禁止、コピー禁止ができる電子すかし機能を備えている。
そのほかコンテンツのセキュリティガードレールとして、フォルダ、ファイルに分類を設定することで、各ファイルの機密度に応じた共有範囲の制限やユーザーへの意識付けの実施を可能としており、これを実現しているのが「Box Shield」のスマートアクセス機能だ。同機能はコンテンツに付与した分類に応じてコラボレーションで招待できるユーザーを制限するなど、社内外のユーザーによる操作ミス/悪意のある操作を予防するセーフガードとなる。
三原氏は、Boxについて「基本的な機能はクラウドストレージであり、情報へのアクセスをつかさどる。それに加えて、ファイル・フォルダ共有、コラボレーション、アクセス権の管理も含めた多様なセキュリティの機能も備える。そのため、活用のファーストステップとしては、これらの機能を利用してもらうことで新型コロナウイルス対策を行い、新型コロナウイルスの収束後はECM(エンタープライズコンテンツ管理)やガバナンス機能などを活用したコンプライアンス対応、APIによる他システムとの連携などに取り組むことで、有意義にビジネスを展開してもらえればと考えている」と強調した。
そして、辻村氏は「実際にリモートワークを実施すると、ZoomやSlackなどコミュニケーションツールだけ導入し、実現できたつもりになっている企業も多いのではないかと思う。1~2週間であれば、コミュニケーションツールで対応できるが、恒常的にリモートワークを継続するためにはコンテンツにアクセスできる仕組みが必要だ。そのため、コミュニケーションにはコンテンツが不可欠であり、リモートワークだけでなく、環境に依存しない情報へのアクセスやセキュリティを無視することはできない。今回のリモートワークは強制的な形になっているが、一過性にするのではなく、これを機にリモートワークを当たり前とし、社内外問わず場所に依存しない環境を構築するべきだ」と提言していた。