人工呼吸器のリファレンスデザインが公開
ルネサス エレクトロニクスは4月16日、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大により不足する人工呼吸器の供給支援に向け、病室外・ICU外でも利用可能な移動式の医療用人工呼吸器の設計を短期間で可能にするリファレンスデザインを公開したことを明らかにした。
同リファレンスデザインは、メドトロニック社のPB560などのいくつかの設計仕様が公開されているオープンソースの人工呼吸器システムを基に開発されたもので、一呼吸ごとに特定の量の酸素を患者に送りこむアシスト制御モードと、一呼吸ごとに特定の圧力で酸素を患者に送りこむ圧力制御モードで、患者に高圧酸素を送ることができる。
アシスト制御モードでは、吸入管の酸素流量を流量センサ「FS1023」が監視し、マイコンが1回の換気量を算出。マイコンが酸素バルブを制御し、送り込む酸素量を管理する仕組みを採用。一方の圧力制御モードでは、吸入圧をマスクに装着された近傍気圧センサが監視し、その数値をRX23Wマイコンに送信。圧力を高め酸素を人工呼吸器に送り込むブロワー部は、RX23Tマイコンで制御されるモータ制御ボードが駆動する仕組みとなっている。
それぞれのデータの送受信は、I2Cバスを通して行われるほか、同リファレンスデザインには加湿部も組み込まれており、適度な湿度を含んだ酸素を送ることができるという。また、それぞれのマイコンは二重化されており、互いに監視・リセットをできるようにすることで安全性を高めている。
さらに、Bluetoothによる無線接続が可能なため、医療従事者はタブレットや携帯機器を使って、複数の患者を同時に監視することもできると同社では説明している。
リファレンスデザインに用いられる半導体
同リファレンスデザインには同社の半導体約20個ほどが推奨製品となっている。製品名の詳細は以下のとおり。
マイコン
- RX23W:32ビットマイコン/Bluetooth 5にも対応
- RX23T:FPU搭載のインバータ制御向け32ビットマイコン
LDO
- ISL9007:高電流LDO
- ISL80410:リニアレギュレータ
降圧レギュレータ
- ISL85410:1A同期整流型降圧レギュレータ
バッテリパック・モニタIC
- ISL94202:スタンドアロン3-to-8セル・リチウムイオンバッテリパック・モニタ
昇降圧コントローラ
- ISL81601:60V双方向4スイッチ同期型昇降圧コントローラ
センサ
- FS1023:液体流量センサモジュール
- ISL29034:統合型デジタル照度センサ
ハーフブリッジドライバ
- HIP2103:60V、1A/2Aピーク、4V UVLOハーフブリッジドライバ
オペアンプ
- ISL28148:精密アンプ
- ISL28191:低歪みレール・ツー・レール出力オペアンプ
なお同社では、自社の有する幅広い製品ポートフォリオとシステム設計のノウハウを活かすことにより、病院や自宅での操作が可能な医療用人工呼吸器システムを短期間で開発できるよう支援していくとコメントしている。