島津製作所は4月10日、従来、2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を約1時間に短縮することを可能とした「新型コロナウイルス検出試薬キット」を開発。2020年4月20日より国内向けに発売を開始すると発表した。
遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出には、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要で、迅速な検査を行うための課題となっていた。同キットは、生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できるという同社独自のAmpdirect技術をベースに国立感染症研究所のマニュアルに沿って開発されたもの。必要な試薬をすべて有することで、すぐに検査を可能としたもので、試薬および試料の調製、前処理(加熱)、反応、検出という全工程を約1時間で完了することができるという。また、煩雑なRNA抽出作業も不要で、試料は処理液と混合し加熱するだけであるため人の手を介する頻度を低減できるため人為的なミスの防止も可能になるという。
そのため、96検体用PCR装置を使って、96検体を検査した場合でも1時間半以内(処理液の混合に15分、加熱処理に5分、PCRに65分で計85分)に終えることができるとする。
また、検査結果の精度向上に向け、反応液に増幅工程が正しく進んだことを確認するための参照成分を添加しており、これにより、偽陰性が生じる可能性を低減したという。
なお、同キットは医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品としての承認・認証などを受けていない研究用試薬という位置づけだが、国立感染症研究所が定めた評価方法で性能を検証し、陽性一致率・陰性一致率はいずれも100%を達成しており、保険適用の対象となる「臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV遺伝子検査法について」(2020年4月9日版)にも記載されている。また同社では5月以降の海外輸出に向けた準備も併せて進めていくとしている。