韓国では、大邱の新興宗教の協会で新型コロナウイルスの感染拡大が発生するなど、1万人を超す陽性者を出したが、ドライブスルー形式でのPCR検査の実施やデジタル技術の活用により、感染の拡大は3月半ばでピークをうち、収束に向かっているとして、産業活性化に向けた活動が活発化してきているようだ。

韓国政府、脱日本を目指し素材・部品・装備スタートアップ100社育成プログラムを開始

韓国政府中小ベンチャー企業部(Ministry of SMEs and Startups)は、日本の輸出管理厳格化に対し、長期的に日本からの輸入に頼らない国内での半導体素材や部品の製造体制構築に向け、素材・部品・装備分野で画期的な成果を挙げる可能性のあるスタートアップ(ベンチャー企業)を毎年20社ずつ、5年間に100社を発掘し育成する事業を推進する活動を開始したと韓国の多数のメディアが報じている。

こうしたスタートアップは自社のみで開発した技術の評価や販路開拓などが困難なことが多いため、韓国政府が大企業や中堅企業のインフラを利用できるように支援する一方、大企業や中堅企業は新事業に向けた技術を確保できるようにすることで、お互いがwin-winとなるような関係構築を目指すという。半導体関連だけではなく、バイオ、人工知能(AI)、再生可能エネルギーなど大企業などの将来の技術需要に対応可能な革新的なスタートアップを発掘し育成するという。

申請対象は設立準備中または創業7年以内のスタートアップに限られる。大企業や中堅企業が提示した開発テーマか自主テーマかのいずれかを選択して応募できる。まず第一期計画として2020年9月に選ばれる20社には事業発展に必要な資金や研究開発費用などを政府が支援するという。この事業は中小ベンチャー企業部傘下の創業振興院が主導し、外郭団体の技術保証基金が技術評価支援を担当するほか、国内19カ所の創造経済革新センターが事業管理、教育、事業化支援、などを担当する。韓国では、4月1日に「素材・部品・装備産業の競争力強化に向けた特別措置法」が施行されたが、そのうちの1つのプログラムが始動したことになる。

在宅勤務の増加で半導体特需が発生、Samsungの業績が増加

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、世界中で自宅待機や在宅勤務に関する命令や要請が出されており、企業はネットワーク越しに会議を行い、学校はオンライン授業に切り替え、閉鎖された映画館の代わりにオンラインでの新作映画配信を始めるなど、世界的にインターネットの活用が進んでおり、データの通信量が爆発的に増加している。

そのため、データセンターのサーバやテレワーク用高性能PC、マイク付きヘッドセット、Webカメラなどの需要が急増、それにともない、高性能CPUやメモリ、イメージセンサなどの半導体製品の需要も急増している。こうした背景から、4月7日付で発表されたSamsung Electronicsの2020年第1四半期業績見通しは、連結売上高が前年同期比5.0%増、連結営業利益も同2.7%増となっており、市場関係者の予測を上回っている。

中国や米国のデータセンターの設備投資が増えたほか、在宅勤務用の高性能ノートPCの需要も増加したため、半導体需要が増加したものとSamsung関係者は見ている。確定された半導体をはじめとする各部門の業績は2020年4月末に発表される予定である。ただし、自宅待機命令に伴い、スマートフォンや家電製品に対する購買意欲は衰えており、半導体のもうけを相殺してしまうことが予想されることから、第2四半期の業績は期待ほど高くならない可能性があると市場関係者は見ているという。

世界的に仕事の進め方が変化する可能性

韓国では新型コロナウイルス感染は収束の方向に向かっていることから、感染拡大防止を目的に行ってきた在宅勤務を解除する企業が徐々に出てきている。例えば半導体メモリ大手SK Hynixを傘下に持つSKグループは、定時出勤退社制度、フレックスタイム制度をとびこえて「スマートワーク制度」を採用し始めたという。今までのアナログ基盤からデジタル基盤へと業務革新をすすめ、業務のグローバル化にもさらに対応するようにするという。

これは従業員を時間で縛るのをやめ、業務は基本的にデジタル空間において非対面で行うようにし、会議も極力物理空間での開催を廃し、どこにいても参加できるデジタル空間上で行うようにするというもの。要は、新型コロナウイルスの感染拡大によって生じた在宅勤務にて経験した業務の進め方をさらに発展させ効率化していこうというものである。こうした動きは韓国に限らず、各国でグローバル企業であればあるほど進むことが予想されるため、新型コロナウイルスの感染拡大が終息した後、世界的に仕事の進め方そのものがガラリと変わるかもしれない。